噂 ページ43
あまり会話もなく、朝食を済ませた。目を合わせてくれない彼女をつばさは悲しそうな表情で見つめていた。その視線に気付きながらAはどうしてもつばさの目を見ることはできなかった。
必要最低限の会話だけの朝。つばさはすれ違おうとしたAの細い手首を掴んだ。
「こっち見てよ」
ひとりよがりな言葉だと自覚はしているが、どうしても見てほしかった。
「今日は全然目が合わない。笑ってもくれない。昨日のことはAちゃんが納得するまで謝る！だから。お願いだから逃げないで…」
「…ごめんなさい」
外は雨。振り払われた手がじんじんと痛む。彼女はそんなに力を入れて払ったわけじゃないのに、痛いのは恐らくはつばさの心が泣いているから。
家を出た。道中、会話はほとんどなかった。目指す場所は同じだから、自然と隣を歩くことになる。人1人分以上の間が空き、つばさの心はかなりショックを受けている。
「…怒ってる？」
遠慮がちに聞くと、首を横に振った。怒ってはいないみたい。だけど、声を聞くことはできなかった。
満員電車の中、多くの乗客からAを囲って守っても、礼を言うだけで目は合わせてくれなかった。大好きな笑顔がない。近付けば近付いただけ離れていく。
稽古場に着くと、もう集まっていてAは真っ先に翔子の元へと駆けて行った。
「あ、」
その手は空を掻く。少しは近付けたと思ったのに、急に離れて行ってしまった。
翔子に笑顔を見せるAから目を逸らして、つばさはため息をついた。
「あら、噂の片方」
「噂？」
翔子の側にしゃがむと、そう言ってきた。言葉の意味が分からず首を傾げると翔子はスマホを見せてきた。それはニュースアカウントのツイート。
『2.5次元を中心に活躍する崎山つばさ。時雨財閥総帥、時雨宗一郎の次女Aお嬢様と熱愛発覚⁉』
「はぁ⁉なにこれ‼」
思いの外大きな声が出て、視線を集めるがそんなものは気にしていられない。
写真も載っていて、海で額を合わせている時に撮られたのだろう。Aは目を瞑っていて、つばさはそんな彼女を見つめていた。
「ありえないんだけど」
「あら、そうなの？やっと付き合い始めたのかと思ったわ」
「そんなわけないでしょ！そもそも好きじゃない！」
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
