翔子と楓 ページ5
Aの側にいられるのなら、傷ついてもいい。その心がどこに向かっていようと、つばさは想い続ける。伝え続ける。それがどんなに苦痛の道であっても。
「Aっ！」
翔子が稽古場に戻ってきた。その顔には緊張と覚悟が滲み出ていた。
びっくりしてつばさの腕にしがみついたAの顔を覗き込む。
「話があるの」
「いや、あの、えっと。わ、私に？」
「そうよ。本当はちゃんとまとまってからAに言いたかったけど」
名残惜しいけれど、Aの腕を離して背中を押すつばさは笑顔だった。
「え、えー。無理だよ。心が死ぬかもしれないよ？」
「んー、じゃあ崎山さん連れてきていいから」
「崎山さんはマスコットじゃないんだけど」
「知ってるわよ。いいですか？」
「俺はいいけど…。俺が一緒でいいの？」
つばさはチャンスがあればいつだってAに振り向いてもらおうとする。それは今もそう。
稽古前だって、男として意識してもらいたくて結局怖がらせてしまったけれど。
つばさはあの手この手でAへの愛を伝え続ける。そんなつばさが一緒でいいのかと暗に聞くと、Aは頷いた。
「崎山さんがいい、かな」
その言葉でまたつばさの心が高鳴った。嬉しさが溢れそう。
「俺が、いいのか」
「行きましょう」
翔子を先頭に、歩きだす。Aはつばさの背中に隠れるように服の裾を握ってついて行った。
出入り口の壁に寄りかかって、楓が待っていた。
「楓、お待たせ」
「おう。……って、なんでAは隠れてるわけ？」
「気まずいからに決まってるでしょ！場所考えなよ」
つばさの背中から顔を半分出して怒るAに、楓は今回ばかりは何も言えなかった。
「それは、ごめん」
「翔子ちゃんも、一応有名な女優なんだからもっと周りを気にして！どこに人の目があるかわからないんだよ？炎上したらどうするの？週刊誌で報道されたらどうするの？ちゃんと自覚ある行動をして」
「すみませんでした」
素直に謝られて、Aはすっきりしたのかにこりと笑った。
「それで？話って？」
「私と楓のこと」
「俺が東京で店を出したら、結婚しようと思ってる。翔子もずっと待ってくれているんだ」
「いつから？」
「2年前くらい…」
「そっか…。全然知らなかった。もっと早く言ってくれたっていいじゃん、水くさいなぁ」
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
