無防備 ページ40
風呂上がり。ドアを開けると、Aは開いたパソコンの上に伏せていた。
「……寝てる？」
近付くと、彼女の髪から同じシャンプーの匂いがして、顔を背けた。
深呼吸を数回して、Aに視線を戻すとその頬に親指で触れる。
「無防備」
「起きてる」
パソコンのキーボードに顔を伏せたまま、Aがそう言う。頭の中がオーバーヒートしそうで少し突っ伏していただけだ。
頬を軽く摘んだり、撫でたりしても抵抗する素振りはない。気を許しすぎ。信頼しているのかもしれないけれど、つばさも男だ。あまり無防備な姿は見せるべきじゃない。
「バカ」
体を起こしたAの頭を引き寄せた。彼女の警戒心の無さに少しだけムカついて、つばさは右頬にキスをした。
「ちょ…」
「無防備なAちゃんが悪い」
頬を押さえるAにつばさはそう言って身を翻した。Aはその手を両手で掴んだ。
「離して。Aちゃんが思ってるほど俺は…」
言葉尻を濁すつばさの後ろ姿を見つめる。両手で掴んだつばさの手がAから逃れようとする。
「そんな風に見られたら、俺何するか分からない。今度は口にキスするかもしれないよ？」
「それは困る。でも、知りたい。崎山さんが困っている理由」
「俺も男なんだよ？好きな人にそんな風に見られたら襲っちゃうかもしれない」
振り返って、つばさはAが座っている座布団の側に手をつく。右手でAの顎を掴む。
揺らいだ瞳を間近で見て、つばさはその肩に倒れ込む。
「俺じゃなかったらキスされていたかもね」
抱きしめられて、顔を赤くする。
「…なんで」
「好きな人のパジャマ姿見て、平気でいられるわけないじゃん。髪の毛からおんなじ匂いするし。無防備。それで何かされても文句言えないからね」
つばさの背中に腕を回した。
「ごめん」
「好きなのに近付けない俺の気持ち分かる？」
「…….近付いてるよね？」
「物理的な距離じゃなくて、心の距離のこと」
「……わかんない」
「…そうだよね。結構辛いんだよ」
Aを離して、距離を取る。
「早く俺のこと好きになればいいのに。そうすれば少しは分かるんじゃない？」
つばさはAに背を向ける。
「もう寝ようか」
「うん」
「Aちゃん、俺のベッド使って」
「え、でも」
「何するか分からないって言ったでしょ。本当に襲う前に行って」
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
