景色 ページ37
「お、お邪魔します…」
一度綾乃の家に化粧水や着替えを取りに行って、つばさのアパートに来た。この部屋に入るのは二度目なのに、そわそわする。
前に来た時は、母を亡くしてすぐで心の傷が深かったからちゃんとは見ていなかった。
1LDKの部屋で、広さがあった。5階の部屋だから、窓からの景色は絶景だった。ただ、高いところもあまり得意ではないので窓から離れたところで眺めていた。
「何見てるの？」
隣に立ったつばさはAの視線の先を追う。
「景色見てた。この前は景色なんて気にする余裕なかったなぁって思って」
「それは仕方ないよ」
Aの髪を撫でて、つばさは優しく微笑みかけた。
「もう全然大丈夫だよ！」
頭を撫でるつばさの手をギュッと掴んで、Aは微笑んだ。つばさの手を下ろして、離した。
「…あのさ、少しだけ仕事してもいいかな？」
「いいよ。必要なものある？」
「ううん。パソコンとUSBがあればどこでだって仕事できる」
「ここのテーブル使って」
指し示したのはテレビ前の小さなテーブル。
「ありがとう」
Aは鞄からパソコンを取り出すと、電源を入れた。起動を確認してUSBを接続する。
今日の顔合わせという名の会議でのことを思い出しながら打ち込んでいく。つばさはAの隣に座って台本を広げた。
舞台とアニメ、俳優と声優が別々で声の質も違うのでなかなかに難しい。
主人公は崎山つばさで、声優は蒼井翔太。血液型は同じでも、育ってきた環境も違えば人間性や性格も違うし、かなり真逆のタイプだとAは思う。
2人とも大好きな人だから、お互いのいいところを活かせれば良いのだが。
『キャラクター設定案』と1番上に打ち込んで止まった。つばさと麻璃央だけならばいくらでも考えつくのに、そこに、声優の翔太と前野がいるから、困ってしまう。
ことりと湯呑みが置かれた。
「すごい百面相」
いつの間にかつばさがお茶を淹れていたよう。湯気の立つそれをAに差し出す。
「お茶どうぞ」
「ありがとう…」
おずおずと手に取って、口元に持っていく。湯気が熱くて、息を吹きかけて一口飲む。
「美味しい…」
「それなら良かった」
テーブルの上に置いて、また頭を悩ませる。
「キャラクター設定？」
「うん。これがまた難しい」
Aはそう言って歯を見せて笑った。
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
