はぐらかされたような ページ30
「Aちゃん、デートしよう。お茶でもどうって誘ってくれたの、ちゃんと覚えてるからね」
「ふふ。うん、うち以外でお願い」
「……ちょうどお昼時だしファミレスでも入る？」
「賛成。お腹空いた」
満開の笑顔の花が咲いていた。
7月下旬の今、気温は30度近く蒸し暑い。
太陽は出ていないが、こういう日は紫外線が強い。すっかり夏仕様の服に変わっていて、半袖から出る腕が白くて細い。
近くのファミレスに入ると、角のボックス席に案内された。窓の外では人や車が忙しなく往来している。
店の内装は温かい木造で、緑がところどころに使われている。
注文を済ませて、Aはつばさを見上げた。つばさは目が合うと微笑みかけてくれた。好きだとその笑顔が伝えてくる。
パッと視線を手元に落として、Aは言葉を紡ぐ。
「今日は少しだけ疲れちゃった」
「Aちゃん、人が多いところ苦手そうだもんね」
「蒼井さんもいらっしゃったし…。緊張した」
「えっと、確か蒼井、翔太さん？」
頷いて、ふわりと微笑んだ。顔を上げると、つばさの大きな瞳と目が合った。
「大好きなんだ。蒼井さん」
「………そ、れは…」
胸が痛んだ。見た事ない顔で、聞いた事のない声でそう言うAに嫉妬の感情が沸き起こる。その言葉の意味を知りたくて、知りたくない。複雑な感情だ。
「蒼井さんが好き。私オタクだからさ、好きな芸能人たくさんいるんだけどね、蒼井さんは別格」
両手を握り合わせて、Aは眩しいほどにキラキラと輝く瞳をしていた。
「声が好き。歌が好き。私が考えたセリフがあの声で紡がれると思うと、感激で言葉にならない」
「………嬉しそうだね？」
「崎山さんのことも好きだよ。でも、なんでだろう。最近は崎山さんといると落ち着く」
「……え、それってどういう」
つばさにとって嬉しい言葉なのかそうでないのか。確認しかけたところで、注文していた料理が届いた。
「美味しそう」
なんとなくはぐらかされたような気分になるが、つばさの目を見て微笑む姿にまあいっか、と思ってしまった。ライバルの出現に焦る気持ちもなくはないが、今はその笑顔が見れただけで幸せな気持ちになる。
手を合わせて料理を頬張る彼女が変わらず可愛くて、つばさも手を合わせて料理を口に運んだ。
「美味しい‼」
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
