任せられる ページ22
時は巡り、Aは1度長野に帰った。
そして、7月19日の朝。Aは再び東京の地に来ていた。人が多い都会の地はやはり長野と違い、少しだけ息が詰まる。
久しぶりに来た綾乃の部屋でAは頭を抱えていた。
「へぇ、面白いことになっているのね」
「全然面白くないよ！」
「あの崎山さんに告白されて、フったけど諦められないから半年以内に振り向かせてみせるって今も言い寄られてるってことでしょ？」
「……まあ、そんなとこ」
「で、Aも諦めさせるって啖呵を切ったと」
こくりと頷く妹の肩を掴んで、綾乃は目をキラキラと輝かせた。
「愛されてるわね！いっそ付き合っちゃえばいいのにもったいない。崎山さんのこと、本当は気にしてるくせに」
「してないもん。私は、崎山さんのことなんて別に」
言いながら、一瞬だけ瞳が揺れた。強く否定しきれない自分が腹立たしい。
「私、崎山さんがAのこと好きなのは知ってたのよ」
「えっ？そうなの？」
「4人で話をした日があったでしょう？ここで」
綾乃と圭輔、Aとつばさがこのアパートの下で偶然会った日だ。動物園に行った帰りのこと。
こくんと頷くAの隣に腰を落ち着けて、綾乃は微笑む。
「あの時、私と圭輔だけ少し抜けたでしょう。その時に圭輔から聞いたのよ。崎山さんは優しそうだし、もしAに何かあっても守ってくれそう。私、崎山さんなら安心してAを任せられると思ったわ」
「……お姉ちゃん、私は崎山さんを巻き込みたくない。私はファンで崎山さんは俳優。それでいいの。それが良かったのに…」
それが1番安全な関係だったのだ。それでも、2人は出会ってしまったのだ。皮肉にも、Aが書いた『刹那の宴』という作品をきっかけにして。驚きもしたし、嬉しかったけれど。こんな展開は想像していなかった。期待もしていなかった。
「仕方ないじゃない。出会ってしまったんだから。崎山さんはAに恋しちゃったのよ。告白された以上は、ちゃんと向き合う。それが道理ってものじゃないの？」
真剣な瞳。この瞳には逆らえない。
「巻き込みたくないのは崎山さんを守りたいからでしょう？そうやって1人で背負うのはもうやめなさい。もう1人で苦しむことないのよ」
綾乃の手がAの髪を優しく撫でる。その手のひらは温かくて、落ち着く。
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
