キス ページ3
「久しぶりね、楓」
稽古終わり。Aを迎えにきた楓と翔子が顔を合わせた。数年ぶりの再会だ。
「おう。お前、見ないうちに縮んだ？」
翔子はキッと楓を睨んで、その胸ぐらを掴んだ。
「ふざけんじゃないわよ。あんたが伸びただけでしょう。私は伸びても縮んでもないわよ」
「おーおー、相変わらず気が強いこと」
「うるさいわね」
両手をあげる楓を離すと、翔子はため息をついた。
「私、ずっと待ってるんだけど。東京であんたが店出すって言うから。でもちっともこっちに来ないじゃない。やる気あるの？」
「そう簡単じゃねぇんだよ。2年やそこらで店持てるほど甘い商売じゃねぇの。資金だって貯めなきゃいけねぇし」
「そう。じゃあ、その資金はいつ貯まるのよ」
「少なくとも、後2年は無理だな」
翔子は腕を組んでため息をついた。Aはまだ中でやることがあるから、先に翔子だけ来たのだが。
「長いわよ。お店持てたら結婚してくれって言ったのどこの誰よ。そんなに待てないわよ」
「いや、2年なんてすぐだから。翔子、頼む。絶対いい店開くから。それまでもう少し待っててくれ」
翔子と楓は付き合ってはいない。けれど、結婚の約束はしているのだ。交際期間をすっ飛ばして、長い婚約期間に入っていると言った方が分かりやすいだろうか。けれど、お互いに好き合っているのだから形はなんでもいい。
「Aに心変わりでもしたら許さないから」
「それは天地がひっくり返ってもないから安心しろ」
「そんなんじゃAに報告できないじゃない」
「それは悪いと思ってる」
首の後ろをかきながら、楓はバツの悪い顔をしている。
「翔子、愛してる。これだけは変わらないから信じてくれ」
「分かったわよ」
照れ笑いを浮かべる翔子に楓は精一杯屈んで、口付ける。身長差があるから、キスするのにひと苦労だったりもするが、苦ではない。
そこへ、タイミング悪くAがやってきた。
「翔子ちゃ…」
慌てて振り返る2人に背を向けて、Aは全力で走った。
「Aっ」
慌てて声をかけるが、もうAの姿は見えなかった。
「報告、しましょうか」
「そうだな…」
決定的な場面を見られてしまえば、報告しないわけにはいかない。ただ、Aの動揺をどうやって落ち着かせようかと考えた。
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
