デートの話 ページ20
「そういうところ、一さんにそっくりだな」
「はあ？お兄と一緒にしないで」
「同じだろ」
「あんなシスコンじゃないし」
「お前はブラコンだよ」
楓の言葉をAは否定しきれなかった。何よりも、自分の命よりも大志が大切だから。大志を守るためならなんだってできてしまう気がするから。
「Aちゃんは兄弟想いで優しいだけだよね」
肩に温もりを感じて、振り返った。見上げるとつばさが柔らかく微笑んでいた。
つばさはAの髪を少しだけ撫でて、名残惜しげに離れた。
「じゃあ、そろそろ帰るね」
「崎山さん、ごめんね。うちのクソ兄貴のせいで嫌な思いしたでしょ」
喫茶・時雨での、一のつばさへの態度が思い起こされて、申し訳なくなる。
「大丈夫だよ。ありがとう」
優しく微笑むつばさにAは一瞬だけ胸が弾んだ。
白い頬に触れそうになって、ギリギリでその衝動を押さえたつばさは髪を一房手に取った。さらさらと指通りのいい髪に一瞬、口付けた。
「ちょっ……」
顔を真っ赤にして慌てるAにつばさは微笑んだ。
「好き」
「バカ‼」
「あんたらさ、そういうの俺がいないとこでやってくんない？」
呆れたようにため息を吐く楓は口では嫌そうにそう言いながら、口元は弧を描いていた。人の恋路は客観的に見ている方が面白い。
「ごめん」
「いいけど」
「楓くん、Aちゃんに変なことしないでね」
つばさが帰ると、もうここはAと楓の2人きりの空間になってしまう。相手が彼女持ちの幼馴染みだとしても、つばさの心中は穏やかではない。少しの牽制をしてみる。
そんなつばさの言葉を楓は笑い飛ばした。
「ないない！俺にとって、女は翔子だけだから！」
「下まで送る。…お風呂のついで」
Aは入浴セットを手につばさと部屋を出た。
「デート、どこ行きたい？」
「……映画。死神遣いの事件帖、まだ見てないの」
「いいよ。行こう」
「いいの？崎山さん、出演しているのに」
「いいよ。Aちゃんと一緒ならなんだって楽しいし。演技の復習もできるから」
「…あ、ありがとう」
「じゃあ、また連絡するね」
「うん」
「送ってくれてありがとう」
首を振って笑う彼女が愛しくて仕方がない。
「気をつけて」
小さな唇が紡ぐ言葉に、深い意味はないのにその一言でつばさは天にも上がる気持ちになる。
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
