嘘 ページ15
「起きた？」
目を開くと、つばさの顔が視界いっぱいに映った。背中にベッドの柔らかさを感じて、Aは目を見開いた。
「きゃあっ！」
驚いてつばさを突き飛ばした。
突き飛ばされたつばさは2.3歩よろけて、楓のベッドにボスン、と音を立てて座った。
顔を赤くして、Aは狼狽えた。見ていた夢の映像が頭の中を巡る。
「Aちゃ…」
「ち、近付かないでっ！」
慌てて起き上がり、ベッドから降りて部屋の端まで後退する。背中が壁に当たって、ずるずると座り込んだAに、つばさは伸ばしかけた手を下ろした。
「大丈夫？」
問いかけると、Aは頭を抱えて蹲った。頬の赤みは引かず、頭の中に夢の映像が強烈に残っている。
「私、どうして…」
「途中で寝ちゃったからここまで運ばせてもらった。ごめんね、不可抗力だから許して」
「あ、そっか…。ごめんなさい。またご迷惑をおかけしちゃった」
肩を落とすAにつばさは朗らかに笑った。
「迷惑だなんて思ってないよ。あ、見て」
そう言って、つばさはスマホの写真をAに向けた。夢の中で写真を撮る時にキスをされたのを思い出して、Aはひっと声を漏らした。
「Aちゃんの寝顔。……なんでそんなに怯えているの？」
「……な、なんでもない！てか、なんで寝顔なんて撮るの！消してよ」
「嫌だ。Aちゃんが無防備に寝るのが悪い」
スマホをポケットにしまって、つばさはAを見つめる。顔は下を向いていて、視線が合わない。
「Aちゃん」
呼びかけるが、その視線がつばさに向けられることはなかった。
「……何」
「顔赤いけど、どうしたの？」
「な、なんでもない！」
赤くなった頬を冷まそうとする姿がつばさにはかわいくて仕方がない。
「夢でも見てた？」
「み‼……てないし」
両手で唇を隠す。嘘が得意ではないらしい。ギュッと目を瞑って、開いた。
「その夢に誰が出てきたの？」
「だから、夢なんて見てないって‼」
ぱちぱちと、瞬きが多くなる。Aの目は大きいから、その様子がつばさにも分かる。
言い寄られている男に、『あなたとキスをする夢を見た』だなんて口が裂けても言えない。何故あんな夢を見てしまったのか、皆目見当がつかない。彼のことなんて好きじゃない、はずなのだ。
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
