生き地獄 ページ13
Aの体重を肩に感じながら、つばさは彼女に自分からは触れないように制御していた。まるで生き地獄のような状況が辛い。
「今なら触り放題なのに、何もしないんだ」
「これ以上、嫌われたくないし。触れるなら起きている時がいい。顔を赤くして照れたり怒ったりするのがかわいいから。……それに、半径2m以内に入るなって言われてるし」
「生き地獄！辛っ！……それ、守ってるんだ」
「うん。今は我慢してる。Aちゃんが嫌だって言うなら近付かないし、触れない。正直、めちゃくちゃしんどいけどね」
Aへのまっすぐな恋心。一途にAだけを見つめる姿が好印象だった。髪にさえ触れないつばさの誠実さが楓の胸を打つ。
車がホテルに到着した。楓は真剣な表情でつばさを振り返った。
「超無神経で、口悪いし、暴力的だし、〆切前とか特に不摂生になりがちでめんどくせぇし、意外と寂しがりやだけど、大事な幼馴染なんだ。崎山さんになら任せられる。Aのことを一途に想える崎山さんの恋に協力したい。いつか一さんを認めさせて、崎山さんがAを幸せにして」
「……うん。Aちゃんが俺を選んでくれるなら絶対に幸せにすると誓うよ」
「では、誓いのキスを」
そう言ってニヤリと人の悪い顔で笑う楓につばさは顔を赤くした。
「し、しないよ。Aちゃんの同意がないと」
同意を得ずに手の甲にはキスをしてしまったけれど、それはAがかわいすぎたからいけない。つばさの心を掴んで離さないAの唇は小さくてかわいい。意識して制御していないと翔子が言っていたように、思わずキスをしてしまいそうになる。
キスはAの同意をもらってからちゃんとしたい。夕日の沈む海辺でAの唇にはじめてのキスを落とす。そんなベタな展開もいいかもしれない。でも、その前にまずは彼女と付き合うために全力でアタックを頑張ろうとつばさは心に決意の炎を灯す。
こんな事を考えているなんて知ったら、『気持ち悪い』と言われてしまうだろうか。
抱き上げた体は小さくて、軽かった。骨と皮しかないのではないかと心配になる。つばさは腕の中で健やかに眠る彼女に見惚れる。こうして寝ている姿もまた、かわいい。
つばさがAに惚れ直している間に楓は車をロックした。
惚れた女を前に、手を出さないなんて楓ならとても耐えられない。
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
