肩に ページ12
それから何件かカフェを巡り、帰りの車の中。後部座席でつばさと並んで座っていたが、気付くと寝ていた。楓と翔子の衝撃の事実を知ったり、兄との言い合いをして疲れたのだろう。
規則正しい寝息を立てるAは窓ガラスに頭を預けている。車の振動で時々頭をぶつけている。つばさはそっと頭とガラスの間に手を入れる。その時、一際大きく車が揺れた。
「あっ」
Aの重心がズレて、ポス、とつばさの肩にもたれかかる形になる。
「えっ……と」
2m以内立ち入り禁止令を出されている今、この距離はまずい。このまま彼女が起きたら多分気まずくなる。彼女の頭を守ろうとした手がAを抱きしめそうになる。ぎりぎりで理性を保っている状態だ。彼女の嫌がることは極力したくない。そう思いながら、夕方、稽古場で抱きしめてしまったのだが。
好きな人がこんなに近くで寝ているのに、その肌に指1本すら触れることすら許されない。髪の一筋さえ触れたらきっと怒るだろう。
そういえば、彼女の寝顔を見るのは初めてだった。まるであどけない少女のように安心しきった顔で眠る彼女に少し不服を感じる。
「もう少し警戒してよ」
ツンツン、と頬をつついてつばさは笑った。仮にも好きだと言い寄られている男の隣で寝てしまうなんて、警戒心がなさすぎる。
頬をつついても、Aは起きる気配はなかった。
「こうやって見ると、ただのカレカノにしか見えない」
「あはは。本当にそうなれたら嬉しいんだけどね」
「A、押しに弱いタイプなんで、ガンガン押してみればそのうちイケると思う」
運転しながら、楓はバックミラーでつばさとAの様子を確認する。健やかな寝息を立てるAは変わらず恋人のようにつばさの肩に頭を乗せている。それを緩んだ表情で見つめるつばさはAを本気で愛しているのだと感じさせる。
「口悪いし、暴力的ですぐに手が出るような女、俺にはどこがいいのかさっぱり分からないけど」
つばさも何度か叩かれたこともあるし、今日もシュシュ投げつけられたりしているから、楓の言葉を否定することはできなかった。でも。
「Aちゃんの魅力は俺だけ知っていればいい」
もう、諦めろと言われて諦められる段階ではない。たった2文字の『好き』なんて言葉じゃ表せられないのに、その言葉以外で彼女への気持ちを表現できない。
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
