衣装合わせ ページ1
この日の稽古は衣装合わせだった。久しぶりに綾乃に会って、Aはご機嫌だった。つばさへの認識の変化に恐れていた気持ちは今はどこへやら。姉が抱えている衣装を嬉しそうに覗いている。
「全部お姉ちゃん1人で作ったの？」
「まさか。数人に手伝わせたわよ」
そう言う綾乃の目の下には隈ができていた。根を詰めると不摂生になりがちなのは姉妹そっくりだ。
それぞれに衣装を渡し、着替えている間に少し椅子に座って休む綾乃。寝ないように、目だけは開いている。
「眠そう。お姉ちゃん大丈夫？」
「ちょっと寝不足なだけよ。大丈夫」
「お姉ちゃん、オレンジジュースあげる。甘酸っぱいから目、覚めるよ」
「いいの？ありがとう」
鞄からパックのオレンジジュースを出して、Aは綾乃の手に乗せる。
「あまり冷たくないけど…」
「ううん。ありがとう」
ストローをさして、綾乃は早速オレンジジュースをひと口飲んだ。
「おいしい」
オレンジの酸味と甘味が同時に口の中に広がって、少しだけ眠気が吹っ飛んだような気がする。とはいえ気休めなので、眠いものは眠いのだけど。
衣装を着た役者陣が戻ってきて、綾乃は仕事の顔になる。オレンジジュースをテーブルに置いて、役者の方に向かう。
咲夜の衣装は白地に桜模様の着物と、片手に三味線。髪の長い翔子は染めてもいないので、地毛で咲夜の髪型に結っていた。
薫は黒の狩衣姿。胸までの白髪を首の後ろで結わえただけの簡素な出立ち。宏規は髪は鬘をかぶっている。髪も白くなければ、長くもない。
直は萌黄色の着物に紺の袴を着用。胸までの茶髪を右サイドで結っている。つばさももちろん、鬘着用だ。左利きのキャラクターなので、生来右利きのつばさは所作などが逆なので大変そう。
灯火は火を司る神様なので、派手な赤。彼だけは着物ではなく、ふわっとかなりゆとりのあるブラウスにスラックスだった。髪は腰まであり、束ねていない。左の1房だけに金の輪がはまっている。もちろん鬘だ。
彰羅は白の着物に水色の袴を着用。薄茶の髪は護衛という職務上、邪魔にならないように短く切り揃えている。彼も鬘だ。
綾乃はひとりひとりのサイズや機能性を確認していた。綾乃の細い指がつばさの襟に触れた時、少しだけ胸がざわついた気がした。
「気のせい」
言い聞かせるように呟いて、綾乃とつばさから視線を外した。
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
