2ショットへの嫉妬 ページ49
写真を開いてスクロールすると、目的の写真をタップした。少し前に桜を見に行った時の写真。桜と松本城を背景に、2人で撮ったものだ。我ながら上手く撮れていると、Aは思う。
Aの横で笑っている青年。目鼻立ちがくっきりしていて、かと言って外国人顔ではない。眉は細く、顔のパーツそれぞれがちょうど良いところにある。左目に泣きぼくろがあり、髪は長すぎず短すぎない。眉を少し太くすれば、福士蒼汰によく似ている。
世間でいうところのイケメンという顔立ちだった。その顔がAの顔のすぐ近くにある。アングル的に、Aが撮ったのだろう。右手が楓の服を掴んでいた。
「楓って名前が女の子みたいだけど、男だよ」
「そう、なんだ…？」
「いがみ合ってるけどね」
机の上の写真を眺めながら、つばさはどうしていいかわからなくなった。
好きな人が犬猿の仲だと言う男と仲良さそうに笑って写真に映っているのだ。胸が締め付けられるように苦しい。つばさが距離を詰めようとすると怒られる、そんな位置に楓はいるのだ。楓が羨ましい。嫉妬してしまうのは仕方がないだろう。好きなのだから。
Aの隣にいたい。近付きたい。そう思っても、つばさは彼女にそれを許してもらえないのに、彼はそこにいることを許してもらえているのだ。それどころか、彼女のかわいらしい手が服を掴んでいて、まるで彼氏彼女のようだった。
痛む胸を、潰れそうになる想いをひた隠してつばさは笑顔を作る。
「見てもいい？」
キラキラと顔を輝かせて綾乃がそう言うので、Aは快く頷いた。スマホを引き寄せて、圭輔と覗き込む。
「よく撮れてるじゃない。これ、いつの？」
「今年の4月。松本城の桜だよ」
「やっぱり仲良しじゃない。2人で出かけるくらいには」
「一緒に行く相手が楓しかいなかっただけ」
「その台詞、昔からずっと言ってるわよ」
綾乃の指摘にAはうっと詰まった。
「あー、綾乃。2人きりで秘密の話があるんやけど」
コソッと圭輔は綾乃に耳打ちした。そろそろ頃合いだと。つばさとAを2人きりにしようとして、圭輔はそう言った。綾乃のことだから、つばさの気持ちに気づいていないだろうからそれを話して協力を仰ごうとも思ったのだ。
「分かったわ。じゃあ、少し外行きましょう」
頷いて2人立ち上がる。湯呑みの中のお茶はとうに空だった。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2020年6月14日 15時
