作家と舞台俳優Ⅱ (ページ40)

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かわいいページ40

「私が男だったら好きになってたかも」

そう言ってAは目をキラキラと輝かせながら彼女が働いている姿を見る。まるで好きなアイドルを見るような瞳。

その瞳をつばさは知っている。つばさや宏規や洸を見ている時もこんな顔をしているのだ。

「崎山さんはそう思わない？」

「…えーと…」

目の前で嬉しそうに笑うAにつばさは言葉を詰まらせた。確かに彼女も美人ではあると思う。世間は彼女を美人だと称賛するだろう。だけど、つばさにはAの問いに素直に頷くことができない理由がある。

つばさの好きな人はAで、世界中探しても彼女以上の美人も好きになれる人もいないと思うから。

「Aちゃんもかわいいよ」

にこりと笑いかければ、じっとAの大きな瞳がつばさを見つめていた。

「崎山さん、早急に病院行った方がいいよ。やっぱり。私がかわいいだなんてありえない。それか、見る目がなさすぎるかどっちかだよ」

「そんなことないよ」

「そんなことあるよ。崎山さんが『煉獄に笑え』で共演していた前嶋亜美さんとか、『クロガラス』で共演していた最上もがさんとかの方が断然かわいいでしょ。私なんてクラスに1人はいる冴えない感じの人間だから」

自分の椅子に座り直してAは語る。近かった顔の距離は離れ、彼女の匂いが離れていった。

「ネガティブだなぁ…」

「せめて身長だけはほしかったなぁ…」

「Aちゃんはそのサイズだからかわいいのに」

そう言えば、キッと睨まれた。
小さい方がかわいい、というのは身長に恵まれたから言える言葉。175㎝から見たら155㎝はかわいいのだろうけれど、Aからしたらそれは褒め言葉でもなんでもない。

「崎山さんは175㎝もあるからそんなこと言えるんだよ。一般的に男性の平均身長は171.2㎝だから、4㎝も上回ってる」

「さすが、詳しいね」

「それに比べて、私は155㎝しかないから。女性の平均身長は157.5㎝だから、2センチも下回ってるの。小さいといろいろ不便なんだから」

怒ってはいないけれど、そう言って拗ねたように上目遣いに見上げてくる彼女の瞳がつばさの瞳を真っ直ぐ見つめてくる。

「そうなんだ。ごめんね」

「別に怒ってないからいいですけど～」

頭に温もりを感じた。つばさが優しい笑顔で頭を撫でている。

「ちょっ」

その手をガシッと掴んで頭から離した。