東京駅 ページ34
じっとその瞳を見つめる。愛しいその瞳に見つめ返されて、頬が緩むのを抑えられない。そのシルエットに手を伸ばして、持ち上げた。手の平の上に乗るほどの大きさのそれをAは感動に震えながら見つめた。
場所は東京駅構内の雑貨屋。
偶然通りかかったその店でAは大好きなアニメのキャラクターのぬいぐるみに出会った。
心が躍り出す。
それを持ってレジに行き、会計を済ませるとAは歌い出しそうなほどテンションがあがるのが分かった。
袋の上から一度、その子を撫でて待ち人を待った。姉の仕事がひと段落し、本邸を出てまた青葉台のマンションへ移ることにした。
本邸はやはり落ち着かないのだ。
「A！お待たせ」
綾乃にそう言われるが、Aはふるふると首を振った。
「全然待ってないよ！」
「行こっか」
頷いて、Aは綾乃と肩を並べて歩き出した。これから姉妹2人、仲良く東京駅構内を散策する予定なのだ。
「服屋行きたいわ。私のブランド、メンズ服がイマイチなのよね」
「うん！お姉ちゃんのブランドの支持層、若い女性中心だもんね」
「そう！どうにか男性陣にも手に取ってもらえるようなデザインを考えたいんだけど、詰まっちゃって。だから、偵察に付き合ってくれると嬉しいわ」
「もちろん！私も人間観察をしながら歩いてるから！」
「ありがとう」
そう言いながら近くの服屋に入っていく。店を半分に分け、右に女性服左に男性服が陳列されている。姉について男性服の方へ行くと、まずは上衣から見始めた。6月も近い今は長袖と半袖と七分丈が混在していた。
赤いチェック柄のシャツに、ベージュのサマージャケット、三角を組み合わせたような模様が描かれたパーカー、単色のサマージャケット。
Aはパーカーの三角の模様を見つめる。
「これ、A3の三角くんが好きそう！」
「え？みすみ？」
「三角が大好きで、いつもさんかくさんかくって言ってるゆるっとしたキャラクターなんだけどね」
そう笑顔で語る彼女に綾乃は耳を傾けながら、服のデザインを注視する。
「Aは本当に好きねぇ。それは漫画？」
「ううん。アプリゲームだよ！役者育成ゲーム」
舞台化・アニメ化はもちろん、ノベル化・漫画化もしているヒット作品だ。
そう、その舞台の方で確か、と笑った。
「植田さんも出てるよ」
「え？声優として？」
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2020年6月14日 15時
