性別崎山つばさ ページ33
つばさは自分の想像に落ち込みそうになる。そんな彼を麻璃央が明るく笑い飛ばした。
「何、性別崎山つばさって‼」
爆笑する麻璃央につられるようにつばさも笑った。
できることならAに少しだけでも意識してもらいたくて、だけど恋愛に興味が持てない限りはそれも叶わぬ夢かもしれない。
せめて彼女が安心して本心を曝け出せるくらいまで近づきたい。
「麻璃央知ってる？植ちゃんの彼女」
「急だね。結構有名な話だよね。あの有名なファッションデザイナーの時雨綾乃さんでしょ？よく捕まえられたよね」
「Aちゃんってその時雨さんのすぐ下の妹なんだ」
「………え⁉」
綾乃はメイクをするから少し印象が変わるが、Aと2人よく似ている。同じ血が体の中に流れているということを証明するかのようだ。
「つばさ、ファイト」
ポン、と麻璃央はつばさの肩に手を乗せた。麻璃央も圭輔から話を聞いたことがある。圭輔の恋が叶うまでのストーリーを麻璃央も知っているから、その妹を攻略するのも険しい道になるだろうことが予測される。
恋に興味がないのだから尚更。
「ありがとう。俺、とりあえず性別男になれるように頑張る」
「今は性別崎山つばさだもんね」
2人は顔を見合わせて、声を立てて笑った。
「Aちゃんもこんな風に笑ってたらいいな」
つばさの呟くような言葉は麻璃央の耳にも容易に届いた。麻璃央はファンが見たら卒倒しそうなほどの悪い笑顔をつばさに向けた。
「ばか。俺が笑顔にしてやる、だろう」
「うん、そう。近い未来俺が」
つばさは堂々と言い切る。まだまだ異性として見られてはいないと分かっていても。同じように好きになってもらえる確証だってどこにもないのに。この気持ちをいつか、素直に伝えたとして頷いてくれる可能性は現段階では限りなく0に近いのに。
それでも、Aを笑顔にするのはつばさでありたいし、その笑顔を守りたいのだ。
ヒュー、と口笛を吹く麻璃央は楽しそうに笑っている。親友の恋心が向かう相手と会ったことはないけれど、きっといい人なのだろうとつばさの惚れ込み具合から察する。
「つばさ、相当好きなんだね。なんか妬ける。そのAちゃんっていう子につばさを取られた気分」
「あはは！何それ！麻璃央と俺は互いに恋人ができてもずっと親友だよ」
「当たり前」
ふふ、と2人笑い合った。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2020年6月14日 15時
