興味ない ページ32
「興味ない……」
Aからのメッセージ。それを覗き込んで隣で必死に笑いを堪えようとするのは俳優の黒羽麻璃央。今日は彼と同じ現場だったので、好きな人ができたことと、その経緯を話した。
その直後にきたメールが『興味ない』の一言。
笑いを堪えようとして、時折苦しそうな声が漏れている麻璃央をつばさは軽く睨め付ける。
「笑い堪えてるの、わかってるから！」
ドン、とつばさは軽く麻璃央の肩を押す。日頃鍛えている彼らだから、ちょっとやそっと押されただけでは重心はブレなかった。
「全然相手にされてないな、と思ったらつい」
そう言って謝る麻璃央の口端はやはりあがったままだ。
「で、どこが好きなの？そのAちゃん？っていう子の」
どこ、と改めて聞かれると少しだけ困ってしまう。好きなところはたくさんある。
最初は笑った顔がかわいくて興味が沸いたのだ。話しているうちに心の中に陽だまりのような優しさがあることを知った。鈴が転がるような声で『崎山さん』と呼ばれれば、自分の名前が特別なもののような気がした。たまに口が悪くなるところもかわいいと思えてしまう。彼女の口から『シメる』という言葉が出てきた時は驚いた。彼女のいろんな表情を見たいし、どんな時でもずっとそばにいたいと思うのだ。だからどこ、と問われてもそれらをうまく言葉にはできそうにない。彼女の全てが好きなのだ。
「全部。たまに口が悪くなるところも、笑顔がかわいいところも」
誰にも譲りたくないし、譲れない。それほどにAのことが大好きで仕方ないのだ。
「つばさの恋、俺も応援するよ。協力させて」
「ありがとう」
「現状、全く意識もされてないんでしょ？」
「悲しいことに」
麻璃央の言葉につばさは頷いた。
行きたいところはあるかと聞いて、『上野動物園』と答える彼女がかわいい。優しい彼女はきっと動物にも懐かれるだろう。
『いいね！上野動物園行こうか』
頭の中はAのことでいっぱいだ。
『それは残念』
なんてメールの中ではおどけてみせるが、彼女をどうやって意識させるか考えてばかりなのだ。考えたって仕方がないことなのだろうけれど。
「Aちゃんの中での俺は多分、俳優の崎山つばさなんだと思う。男だって意識されてるかどうか……。もしかしたら性別崎山つばさだったりして」
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2020年6月14日 15時
