窓の修理 ページ1
家に着く頃。夕方というにはまだ日は高く、昼というには火が傾いている時間帯。
運転していた車を降りて、家を見渡せば、確かに窓ガラスが派手に割れている箇所を発見した。人一人くらいなら侵入できるほどの大きな穴が開いていた。
「ただいま」
ドアの鍵を開け、玄関に荷物を置くと自室に直行した。部屋の入り口にかかっていた石切丸に扮した崎山つばさの暖簾をくぐると自分の家のようにくつろいでいる男がいた。
「あ、Aおかえりー」
呑気なその声にイラッとしながら、幼馴染みを見下ろした。立っていると身長の関係で見下ろされてばかりなので、少し新鮮だ。
「いや、おかえりーじゃないよ。なんてことしてくれたの」
非難気味にそう言いながら部屋を見渡す。割れたガラスは綺麗に掃除されていて、部屋の物も大きな損傷は見られない。これなら業者をすぐに呼べそう。
Aは携帯を取り出して窓ガラスの修理を依頼すると、割れた窓の周りの物をどかした。
「ちょっと。楓も手伝って」
ほとんどがぬいぐるみだったのですぐに片付けることができた。
程なくして業者の人が数名来て、ものの数十分で窓は元通りになった。
お金を払い、業者の人を見送るとAは部屋の椅子に腰掛けた。荷物を開けて、箱を取り出すとそれを楓に突き出した。
「はい」
「何？……はっ！まさか、爆弾でも仕掛けられてんの？」
大袈裟に肩をびくつかせる楓だが、その顔はニヤニヤとからかいの色が浮かんでいた。
「んなわけねーだろ！東京のお土産！変なこと言ってんじゃねーよ、このクソ学生が！」
「…お土産？お前が？」
何か不気味なものでも見ているような、意外そうな顔をされたので、Aはそれを楓の顔面に投げつけた。
「暴力女」
それを難なくキャッチして、楓はその端正な顔に挑発的な笑みを浮かべた。
「うるさい！いつも買ってきてんでしょうが、この無駄遣い男！いいから素直に受け取りなさいよ！」
「A、ありがとう」
喉の奥で笑いながら言われた感謝の言葉は誠意が全く感じられず、Aはため息をついた。
「お母さんのとこ行く」
「まあまあ」
荷物をまとめ出すAを宥める楓だが、キッと睨まれた。
「今日はもともとお母さんに会ってから帰る予定だったの！楓のおかげで時間が押してるの」
「送ろうか？」
問うてくる楓にAは首を横に振った。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2020年6月14日 15時
