浮気11 ページ12
香菜穂side
｢……あのね、単刀直入に言うわね。きらい、だいきらい、貴方が、邪魔なのよっ！！！！！｣
｢え……｣
私がそう、一息に言うと、憎くて仕方がない目の前にいる女は心外だとでも言うようにぽかんと口をあけた。
憎くてしかたがない。
好きな人に好きって言ってもらえて。
好きな人の側で笑っていられて。
私の好きなものを全て奪っていって。
狡いと思わない？
運よく家柄には恵まれた。
家の権力で多くの人を屈服させることもできた。
頭も割と良い方だったし、運動も嫌いじゃなかった。
小学生の頃はそれこそ私に逆らえる子なんて居なくて。
なんでも言うことを聞いてもらえたし、欲しいものも全て手に入った。
でも、手に入らなかったものもあった。
―――悪いな、僕には好きな人が居るんだ
｢浅野君……｣
｢が、くしゅ……？｣
驚いたような顔をする、憎い憎い女。
驚いた顔なんて普通は間抜け面な筈なのに、この女はそれですら美しかった。
「どうして浅野君のことそうやって気安く呼ぶの？！？私の！前で！！！当てつけのつもり！？！」
「……えっと、」
「どうしてよ！どうして私がこんな思いしなきゃいけないのよ！浅野君は、私と付き合ってくれた。でも、心の中ではずっとずっと貴方の事を思ってた……！｣
じーん、と鼻の奥が痺れるほど熱い涙が溢れてきた。
やだ、中３にもなって号泣するなんてみっともない、なんて思いつつも涙はとどまることをしらなかった。
｢私、ずっと浅野のことが好きだった……！私のこと好きじゃない、って知りながらもずっとごまかしてた。親の金に頼って、相手を脅してただけなのに……私が思いつくことは全てやってみせたのに、浅野君は私のものにならなかった。だから、貴方が羨ましかった……」
悔しい。
この私がこんなに惨めな姿を晒しているというのに、きっと浅野君の瞳には私に対する同情すら垣間見えない。
｢好きな人に好きって言ってもらえる、貴方が心から羨ましかったわ……｣
続く (更新停止中)
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作者名：胡桃咲ふわり
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年1月18日 19時
