青い月。 (ページ10)

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「なぁ、、」

「もう店来ぇへんの？」

「行く気はないです。純粋の癒しをもっとほかのところで探します」

「ならさ、次からの指名俺にせぇへん？」

「は、」

だってもう、関わりたくないといったじゃないか。
震える右手を、冷たくなった右手をかばってまでどうして私に頓着するのだろう。

カランと溶けて行った氷が音を立てる。
涼しげな音を立てたころにはっと我に返る。

「末澤さん、私と関わりたくないって言ってませんでした？」

はっと気にしたところでもう遅い。
苦しそうな顔はもうなくなっていて、怒りに悲しみに満ち溢れ顔を覗かせていた。

目の前の状況がよくわからないままでいると、私の左手を力強く握りしめる末澤さんの姿。

あれ、おかしなこと言ったっけ。

そんなことを思って、そんな錯覚をしてしまうほどに私が思っていた態度と今実際に見せられてる態度は違っていた。

「そんなこと言ってないし、思ってもないんやけど」

「でもっ……」

そこまで言って、気が付く。

確かに、末澤さんが言った訳でも態度に表したわけじゃない。
勝手に私が判断しただけだ。

もしかしたら、関わりたくないって思っていたのは末澤さんじゃなくて、きっと私なんだ。

あそこのお店のキャストだって知って勝手に警戒して。
勝手に距離を置きたくなって。
勝手に軽蔑していた。

軽蔑するべき人間はきっと末澤さんや私なんかじゃなくて。
もっとほかのところにいる誰かなのだと思う。

でも、その軽蔑ができないのはその対象が目の前にいないからとかそんなことなんかじゃなくて。
きっと。
少しでも末澤さんにいいように見られたいなんて思っている心があるからで。

「なんでもないです…」

「……で、どう？次からの指名、正門やなくて、俺で」
「少なくとも、俺はお客さんをそういうことをするためにあの場所で働いてるんとちゃうし」

それに…

その言葉かき消すように、机の上に置いてあったコップが床に落ちる。
スローモーションのように、ゆっくりと落ちていく。
コップの中に入ってた氷が床に散らばって、慌てて店員さんが誤る。

その一連の流れを冷たい瞳で見つめて。

「お前、言い過ぎとちゃうか？」

「うるさいな。リチャはあのままでええと思ってんの？」

肌が黒くて、パーマをかけたかと思うほどの髪質に、うっすらとカラーをかけた毛先が目立つ。