SNOW MAGIC（緑） (ページ7)

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「ごめんなさい……迷惑かけてしまって」

まただ
謝ってばっか

春ちゃんは覚えていないだろうけど、俺は春ちゃんを覚えている

初恋の相手である、春ちゃんに頼ってもらえるのは嬉しいこと

男としてやっぱり頼られる方が嬉しいだろう

「ううん、大丈夫だよ……」

背中をさすってあげる

震えていたからだが落ち着きを取り戻したように震えが治まっていく

「ごめんなさい」

ココアを飲み終わったころ、
春ちゃんの声が聞こえないなと思って右をむくと気持ちよさそうに寝ている

寝室まで運んで、2つのコップを洗う

また寝室へ戻って机の電気をつける

いつものように、日誌を書いていく

「あ、べくん」

名前を呼ばれた気がして後ろを振り向くと寝ている春ちゃん

あぁただの寝言だったんだ、
って肩を落とす

名前を思い出してくれたんだ……！
って嬉しくなってた自分が馬鹿みたいだ

思い出してるわけがない、なのに心のどこかで願っているんだ

思い出してくれるかな？って
ただの馬鹿だ

「おやすみ、春ちゃん」

そっと頭を撫でて寝室を出る

リビングのソファでブランケットをかけて目を瞑る

明日になったら、この魔法のような夢の時間は終わってしまう
今日の夢の時間を噛み締めて眠る

ｺﾝｺﾝｺﾝｺﾝ

リズムの良い、まな板を叩く音が聞こえる

体を起こして音のするほうをむくと
真剣に野菜を切っている春ちゃんの姿があった

そんな姿でさえも、心臓の音は早くなる

「おはよう」

台所に移動して、下から春ちゃんを覗き込むような体制で挨拶をする

これまた顔を赤くして目をそらすものだから、不意にもキュンとしてしまう

「お、おはようございます」

少しだけ人と目を合わせるのが苦手で、話すのが苦手な春ちゃん

懐かしさが一気に体を覆う

「あ、阿部くん」

小さな声で聞こえた名前を呼ぶ声

覚えててくれたんだ、
ってそんな些細なことで気分が上がる

「ん？」

なんて、平常心を保っているように見せ掛ける

平常心なんて保てるわけがない

『見せ掛け』は得意

特に、春ちゃんはこういうのを見破ることは出来ない人だ

「ううん、なんでもないです……」

たどたどしい春ちゃん

ほんとに可愛くて可愛くて、今すぐにでも抱きしめたくなる

「そ笑」

しばらくして台所をでてきた春ちゃん
お盆の上には美味しそうな、さっきできた料理

「ありがとね」