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───Aが帰ってきたのは、とうに日が沈み切った頃だった。
疲れきった顔。朝と比べて顔色は更に悪い。
扉を開けて俺の顔を見るなり、彼女は心底安心したような顔を浮かべた。
『……何か不都合なことはありましたか』
「それなら今この状況なんだが？」
『……もう少し待ってください』
静かな声でそう云った。
そんな声を聞きながら、夕食がテーブルに並ばれる。緑を基調としたサラダ、綺麗な琥珀色をしたコンソメスープ、肉厚な茸と一緒に焼かれた鮭。決して手を抜いていないのは、不自由な思いをさせないと誓った彼女なりの考慮か。
「……」
『そんなに見詰めても、昨日のように薬は入れていませんよ』
警戒していた俺にAは云う。
最も身近で信頼していた部下に薬を盛られたのだ、口に運べなくなるのも当たり前だ。
嘘は付いてないことが伝わったから、恐る恐るスープを口に入れる。
優しい味付けの液体が、喉を滑っていく。
「……美味ェ」
『それは…ええ、良かったです』
同じようにAもスープを口に運んだ。
足に付いた鎖がジャラリ、と重い音を立てる。
「……どうせ出れねェようにしたなら、こんなのいらねェだろ」
『まあ、そうですね。でも外さないことをお勧めしますが。その鎖、玄関まで届きませんから。余計なことしなくて済むでしょう？』
相変わらず抜け目が無い女だ、と思う。
然しそんなこと云いながら、動きやすいように片足にしか繋いでいないのだからその癖甘い。
鎖など、一瞬で砕けさせることが出来るというのに。
「何時になったら俺を解放する？」
『……すぐに終わらせます』
言い方が妙に引っかかるが、もうこれ以上は聞くまいと其処で黙り込んだ。
彼女も何も云わなかった。沈黙が降りる。二人だけの、静かな静かな夜だった。
やがて夜は深く沈み、暗い闇に微睡むのだった。
# # #
「……全然眠れなかッたな…」
独り言と共に掛布団をどかして、ゆっくり上体を起こす。
乱暴に頭を掻きながら周りを見れば、それは見慣れない真っ白な空間。目覚めたのは部屋の中央に置かれたソファの上だった。
『御早うございます。朝御飯、出来ていますよ』
「…嗚呼、貰う」
いい匂いが充満し、その匂いの元に目をやれば綺麗によそられた朝御飯がテーブルに並んでいた。
トースト。添えられたポーチドエッグ。カリカリに焼かれたベーコン。ポテトサラダ。珈琲はまだ淹れたばかりか、湯気が立っている。
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
