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どんな顔をすれば良いか分からなくて、感情に翻弄された今の顔はきっとひどく醜い。
怒っているのに涙が止まらなくて。
泣いているのに怒鳴らずにいられなくて。
駄々をこねる子供のように、ただ泣き叫ぶ。
『知っています、知っているんです！貴方にその記憶は無い！けれど…！けれど、私…！あんなの耐えられない……！
貴方が私の為になんて、死んで欲しくなかったのに…っ！』
知っている。こんなのただの八つ当たりだ。
彼にはこれ迄のループの記憶など無い。私しか知らない。あの悲劇を。
けれど、どうしても許せなかった。
自分は彼の為に自分を殺して巻き戻ったのに。それなのに彼は、私を庇って死んでしまった。
『如何して…！』
涙を零す私に、彼は。「A」、と。再び名前を呼んだのだ。
そのまま彼はゆっくり、驚きで固まる私の顎を掬う。
ぶつかり合う視線。瞳の海色にそのまま溺れて死んでしまいそうで。
まるで接吻でもされるみたいだと思ってしまった私は、自己嫌悪の気持ちが湧き出て目を逸らした。
「……嫌なら全力で殴れ」
『──え……』
彼の顔が次第に近付く。
嗚呼、こんなの避けられる訳ないじゃないかと思って、そのまま眠るように目を閉じた。
唇が触れ合う。中也さんの香りに包まれて、また涙がこぼれてくる。
優しくて、あたたかくて、溶けてしまいそうだった。
やがて名残惜しく感じながら唇が離れ、嬉しさと未だ消えない悲しさが混ざり合う。
それでも浮かんでくる言葉は、如何して、だった。
熱の篭ったお互いの視線が絡みあう。
「それは、俺はお前が好きだからだ」
『────』
「だから俺は、手前を庇ったンだ」
その記憶はないのに、如何してこの人はいとも簡単に、その記憶があるように云ってしまうのか。
彼は私の見てきたものなど知る筈も無いのに。
それでも彼は、まるで見てきたように云ってしまう。
何も知らない。なのに、否定出来ないくらいその瞳は真っ直ぐで。
『……貴方が私を庇ったのは、貴方が優しいからだと思っていました』
「違ェよ。お前に生きてて欲しいからに決まッてンだろ」
両手で私の身体を包み込んで笑った。
…良いのだろうか。私なんかがこの人に愛されても。
その権利が、私にはあるのだろうか。
渦巻く暗い気持ちが伝わったのか、彼は抱き締める力を強めて続きを云った。
「昨日の約束だ。覚えてンだろ？
───笑え、A」
『………っ』
この人は、本当に狡い。
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
