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『私は…貴方の心を傷付けても良いと思ってしまった。それで貴方の命が助かるならと。…何も出来ない私は、命も心もどちらも救うなんて無理な話だと分かってしまったから…』
情けない。視界がぼやけて声が、肩が震える。
まるで子供じゃないか。
俯いているから彼の表情は見えない。見たくない。見るのが怖い。
だから、顔を上げられない。
『……ごめんなさい、中也さん。…本当に、ごめんなさい…っ』
『誘拐してしまってごめんなさい…っ…こんな方法しか思い付かなくてごめんなさい…！傷付けて良いと、思ってしまって───』
「A」
ごめんなさい、と云おうとした私を凛とした声が遮断する。
その続きは云わせないとばかりに。
恐る恐る顔を上げると、そこには優しい表情をした中也さんがいた。浮かべられた微笑みはあたたかくて、溶けてしまいそうで。
同時に、それでもこの人は私を許してしまうのかと悟った。
「俺はお前に助けられた、ただそれだけだ。
…Aは優しすぎる。だからそうやッて何時も自分を責めるンだよ」
『……っ、』
「ありがとな。あとお前が作ッてくれた飯、すげェ美味かった。…それと」
「俺がすまなかッた。…お前を置いて逝っちまうなンて俺は最低だ。…一人にして悪かった。…ずッと一人で────
………そう、だよな。Aはずッと、一人で同じ世界を何度も……」
云っているうちに気が付いたように、その表情はどんどん悲しみが滲んでくる。
…どうして貴方がそんな顔をするのか。
私には分からなかった。
「ずッと一人で、寂しかッただろ？
もうお前にあんなことさせ無ェ。絶対に、今度は俺が手前を守るから」
『…寂しいだなんて、そんな、こと………ほんと、違いま、』
云い切れずに言葉が詰まる。
鼻がツンとして、息が苦しくなる。
目頭が熱くなっていく。
そして次の言葉で、とうとう。
「………今までお疲れさん、A」
『───……ぁ、ぅう…っ！』
ぶつりと、私の中で何かが切れる音がした。
堪えきれなかった涙が溢れ、地面に静かに落ちていく。
抑えきれない激情の濁流に呑み込まれ、しゃくりあげながら私は───怒鳴る。
そう、これは。
ずっとずっと、私の心の底で消えてなくならなかったもの。
今まで押し込んできた、あることへの疑問と不満だった。
『───如何してですか！如何してあの時、私を庇ってしまったのですか！？』
怒りと悲しみがごちゃごちゃだ。
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
