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静かな、静かな空間だった。
太陽の光が射し込む、窓の前の寝台。
目の前には眠る中也さんがいる。
────太宰さんに連れて来られたのは中也さんが住むマンションだった。
太宰さんは中也さんを帰らしたあと直ぐに帰った。
…もうこれで、私と彼の誘拐生活は終わった。だから彼が帰る場所は、彼の家。私の家じゃない。
余りにも、ほんの短な誘拐生活だった。
けれど、家に帰ったら誰かがいる、という事実は、私にはとても嬉しかったのだ。
「ただいま」と云えること。
「おかえり」と云われること。
…それがとても、あたたかかった。
そんな温もりを思い出して一人微笑んでいると、「……ん、」と小さな呻き声が聞こえた。
彼は目が覚めたようで、瞼をゆっくりと開いた。
綺麗な海色の瞳が露になる。
『…お目覚めですか、中也さん』
「…嗚呼。御早う、A」
『御早うございます。お身体は大丈夫ですか？』
「嗚呼、何とも無ェ。大丈夫だ」
手を目先で開いては閉じる。
その様子を見ると本当に大丈夫そうで安心した。
彼は視線を窓に移して眩しげに目を細める。
そして身体をゆっくりと起こして問うた。
「あー…、俺どのくらい寝てたンだ？」
『いえ、ほんの少しですよ。安心してください』
「そりゃ良かッた」
彼は一つ溜息をついた。
そして部屋を見渡して何度か瞬きを繰り返したあと、「…俺ン家だな」と呟いた。
久しぶりの帰宅にまだ戸惑っているのだろう。
云いたいことは山程あるが、まずは報告だ。
『何はともあれ、任務お疲れ様でした。標的は死亡を確認、マフィア密輸品の奪還は後に調査班に向かわせます。
…貴方のおかげです。本当に、お疲れ様でした』
「何云ってンだよ。全部手前の功績に決まってるだろ。俺が此処に居るのも、全部Aのおかげだ。…ありがとな」
『…そんな…私は何も…それに…』
今も残る罪悪感に喉が詰まって言葉が出てきてくれない。
決して表情を見せまいと俯いた。眉を寄せて、瞳を伏せて。
自分の過ちをぽつぽつと思いながら。
やっと出てきてくれた、震えた声で言葉を紡ぐ。
彼に謝らなくてはいけないことが、沢山あった。
『……私は貴方を攫ってしまった。貴方を騙して、毒を入れた。…ずっと思ってたんです。もっと他に方法はある筈だって…』
「────…」
『…でも、そんな私を貴方は許してしまった。それが…私には辛かった…。如何してこの人は私を責めないんだろうって、ずっと』
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
