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その会話は、紛れもなく「双黒」だった。
中也さんが黒い手袋を外し、そして。
「───汝、陰鬱なる汚濁の許容よ、
更めてわれを目覚ますことなかれ」
地に大きなクレーターが広がった。
周りにあった煉瓦や折れた大木が浮き上がっていく。
その様子をただ呆然と眺めていた。
『…中也、さ』
「アレが本来の中也の姿だよ。
…怖いかい？」
『……綺麗…』
太宰さんが目を見開いたのを視界の端に映った。
「…中也には惜しいなぁ」と云っていたのが聴こえた、気がした。
自分でも如何してこんなこと云ったのかは分からない。
だが、何故か如何しようもなくその姿が、綺麗だと思ってしまった。
中也さんは咆哮を上げ、瓦礫を持ち上げて彼を攻撃していく。
男はそれを異能で防ぐが、異能の化け物は直ぐに霧散する。
それを繰り返す様子を眺めながらただ祈る。
(大丈夫…！此の侭…！)
男の異能力にはきっとタイムリミットがある。
その証明が、ループ二週目の世界で私を毒薬でとどめを刺そうとしたことだ。
長期戦なら勝てる。
「いや、中也に長期戦は出来ないよ」
『え…！？』
「御覧。中也の身体」
目を向ければ、鼻や口から血が出てきている。
短期戦で決めるしかない。
込み上げる思いを抑えるように胸に手を置く。
私は彼を、信じている。
小型のブラックホールが出現し、化け物を壊していく。
化け物は現れては壊れ、また現れては壊れていく────が、あることに気が付いた。
相手の異能の速度が遅れてきている。
最初は攻撃が出来ていたものの、今は完全に防御に必死だ。
若しかしたら。
『太宰さん！標的のタイムリミットが近い筈です！』
「そのようだね。
───さあ壊せ、中也」
圧縮された莫大な重力弾が───周囲を全て吹き飛ばした。
砂煙に包まれる。
だがその中を太宰さんは突っ込んで行った。
『……っ！前が…！って、太宰さん！？』
「Aちゃん」
振り向いた太宰さんは、私を真っ直ぐに見ていて。
それだけで、私は分かってしまった。
きぃん、と遠くで耳鳴りがして。
記憶が巡る。
それと同時に私の足は、勝手に動いていた。
一度目のループ、私は彼を救うと誓って。
二度目のループ、私を庇った彼の優しさを知って。
三度目のループ、私の道化さえ見破られて失望して。
四度目のループ、私が皆を死なせてしまったことを後悔して。
もう、終わらせよう。
この螺旋を───私が此処で断ち切るのだ。
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
