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意識が浮上していく。
目を開き、何度か瞬きをして頭を覚醒させる。
『おはようございます、中也さん』
目の前には昨日と同じ部下の顔。無機質な声が響き渡る。その声と瞳は、任務中の彼女を匂わせた。
一瞬頭の中が真っ白になる。然し足に繋がる銀色の鎖に気付いた途端、現実に引き戻れた。
「……一体どういうことだ、A」
相手を睨みつける。
それを何も変わらない表情で聞いていた。
光の無い瞳はまるで別人のようで。
昨日の記憶が蘇る。
そうだ、自分は毒を仕込まれたのだ。
『貴方を攫わせていただきました。』
「理由を説明しろ…！」
『云えません』
鎖がジャラリと大きく音を立てた。
鎖だけでは無い。繋がれた壁も、ミシリと音を立てたのが聞こえた。
「こんなの付けたって無駄だ。それを手前は知ってンだろ？」
『ええ、知っていますとも。ただの気休め、みたいなものですよ。───でも、それをしないことをお勧めしますが』
普段の明るい雰囲気が消えている。
声は透明で、だが、冷たさは感じない。
なのに、紡ぐ言葉は残酷で。
『貴方を、此処から出しません』
「…巫山戯るな。今すぐにでも俺は此処から、」
『なら私は、今此処で自害しましょう』
「───ッ！？やめ、」
静かに告げた。何の躊躇いもなく、一瞬の間に懐から取り出した、ククリナイフを首にあてて。
最低最悪の脅しだった。差し出すのは自分自身。
脳に危険信号が鳴り出す。やめろ、それは、それだけはいけない、と。
そんな俺を他所に、Aは言葉を続ける。
『貴方への約束ごとがあります』
「…何を……」
『一つ目。私はポートマフィアを裏切っていないこと。
二つ目。私は貴方と争う気はありません。
三つ目。貴方のやるべき事は全て、私が片付けます。
四つ目。後に必ず、貴方を解放します。
五つ目。解放したあと、貴方は私の命をどう使っても良いこと。
六つ目。私は貴方を絶対に、守ってみせます』
奥に見えるのは、強い、強い意志。
炎にも見えるそれは、大きく燃え上がっている。
執念か、それとも執着か。
なのに。
『……だから、"一生"の、お願いです』
泣き出しそうな瞳と声なのは、一体何故なのか。
『暫く、貴方を閉じ込めさせてください』
目の前の女から目を離せない。
それが、あまりにも、一人の子供に見えたから。
弱々しくて、泣き出しそうで、寂しそうで。
だから、だから。
首を横に振れなかった。
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
