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自分が持てる装備は全て揃えた。
小型の爆弾や手榴弾、愛用の銃、そしてククリナイフ。投擲用のナイフまで。
相手の異能は厄介だ。が、タネは分かっているのだからまるっきり不利な訳じゃない。
襲ってくる化け物を何度も斬り裂いて。
全力全霊で闘ったつもりだった。
だが、それでも────
「…まだ続けるか？」
甘かった。
私の実力が足りなかった。
おまけに、身体のあちこちが元々から壊れていたのだ。
防げず異能で打撃を食らった左腕からじくじくと血が流れて使い物にならない。
右手は元より異能の反動で麻痺をしていた。ナイフを握る手が覚束無い。
今ではもう手入れされていない庭、相手の異能の衝撃で出来たクレーターの真ん中で、両膝をついていた。
沈黙するだけで身動きが取れない。
まだだと心は叫んでいるが、身体は意思に従ってくれない。
「…これは計算外だったな。異能も無しで一人で私と闘うとは」
『…っ…煩…さ…』
い、と言葉を繋ごうとしてまた血を吐いた。
口に広がる鉄の味。肩を揺らして息をする。
異能をもう使わないのなら、持っていないのも同然だ。
目線の少し先の地面に、男の異能力の影が蠢いている。
……私の敗北だ。
分かっていた、こんな結末。
元より一人で倒せるなんて思っていない。生きて帰れるなんて思っていない。
男は何も云わなくても悟ったようで、異能を操るように手を前へ突き出した。
『大切な人の結末を変え、たくて、…私四度も巻き戻ったんですよ』
「…お前、真逆…」
『ええ。貴方の思っている通りですよ。
でももう、私の身体は限界です。…ねえ主人様？……なんちゃって』
「………」
最期に皮肉に笑ってやった。
勿論、私が男の召使いになったことなど相手は覚えてはいない。
私だけが、覚えている。
天を仰いだ。
…嗚呼、何度も繰り返した世界の中で一番辛かったこと。それは。
───誰も覚えていなかったことなのだ。
孤独だった。皆、命を落とした記憶など残っていない。
何もかも、覚えていない。
それが本当に、辛かった。
『……嗚呼、やっと』
解放されるのか。この螺旋から。
大丈夫。私が信じた彼はきっと、この後の世界で闘って勝利してくれる。
私の役目は此処で終わり。今の私は、信じることしか出来ないから。
影が近付いてくるのが見えて。
私は笑顔で死ぬ。
───筈だったのに。
目の前で、地面に映る影は砕け散って見えなくなった。
「重力操作───！」
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
