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────私達の勝利だった。
標的の男は死んだ。
これで、中原中也は死なないで済む。
目の前には全壊した男の拠点。
周りにはその破片、瓦礫が散らばっていた。
見上げた夜空はあんなに穏やかで美しいのに。
地上は、地獄の呼ぶに相応しい程こうも醜い。
『────………』
生きている。
私は生きている、のに。
亡霊のようにふらふらと、覚束無い足でこうして歩いている。
瓦礫だらけの地面をただ踏んで、また踏んで。
勝てた、のに────
『だれか』
────私以外、居なくなってしまった誰かを、探している。
そう。この三十六人、全ての力を合わせて男は死んだ。
私が最初に伝言を頼んだ彼。その彼は一番の功績者だった。
当然、苦戦した。
犠牲者は攻撃を避けられなくて命を落としたのが大半だった。
が、彼の自分を犠牲にした一撃。その合間に私が入って、そして皆の援護があってやっと、倒せたのだ。
深い傷を負ったが、数少ない残った者は帰れる────筈だった。
私達の目的は殺害だけでは無く盗られた密輸品の奪還だった。
だから、密輸品が隠されている部屋を見付け、調査をしようとする、その時だったのだ。
突如として、建物が爆発した。
仕掛けてあることに、私達は気付きもしなかった。
当然、私達は吹っ飛された。
皆より後ろにいたことが良かったのか、私は運良く軽い傷で済んだ。
だが───まわりには、誰もいなかった。
砂煙がやっと晴れて、散らばった瓦礫と、死体を見付けた。
さっきまで生きていた、仲間達の、死体。
気付いたときには何もかもが、手遅れになっていた。
『誰か』
虚ろな声が、もう何も聞こえない空間に響く。
痛いくらいの、静寂だ。
ただ歩くだけの機械のように、瓦礫の上を歩いている。
───その時だった。
「Aさん」
凛としていて、よく通る声が耳に入る。
聞き慣れた声。そう、一番の功績者である彼だった。
ハッとして、声の元へ振り返った────
『───、───ぁ……？』
彼の両脚が、瓦礫に押し潰されていた。絶叫は出なかった。
ただ訳も分からず、数秒固まっていた。
こうしちゃいられない、とすぐに瓦礫を退けようとするが、重くて全く持ち上がらない。
『ぁ、や、まってて、すぐに、』
「Aさん」
混乱して、混乱して。
何か方法は無いかと考えても、何もなくて。
空っぽになった私に、目の前の彼は微笑みを浮かべていた。
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
