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優先順位の問題だ。
目的や理由を探るより、まずはあの男を倒すべきなのだ。それから情報を見つけるしかない。
それなら。
『…貴方にお願いがあります』
「Aさん」
彼の澄んだ声が廊下に響く。
その眼は真っ直ぐに、私を射抜いていた。
訳も分からず、喉がきゅ、と引き締まる感覚があった。
「貴方はお願いではなく、「命令」するべきです。…貴方は優しすぎます」
『……っ』
声が詰まる。
が、それも一瞬、直ぐに小さく息を整えて彼を見た。
『──幹部補佐として貴方に命令をします。
現在、今晩と手が空いてる者に緊急任務の連絡を頼みます』
目の前の彼が目を見開いた。
が、動揺も束の間、直ぐに此方に向き直し、表情は真剣なものへと変える。
鋭くされた目付きは正に、マフィアと呼ぶに相応しかった。
周りに聞こえないように、小さく口を開く。
『私は未来を知る異能力者です。中原中也が明日の任務で命を落とすのを見ました』
「──な…！？」
『そんなことさせません。だから代わりに、私達の手で討つのです。
緊急任務です。このことをお伝え下さい』
彼の持つ資料が、くしゃりと小さく鳴ったのを聞いた。
驚きを隠すように、「…分かりました」、と彼は静かな声で応える。
胸ポケットに入れていたメモ帳に、万年筆で時間や場所を書いて渡した。
『あとこの件は首領や幹部には絶対に内密です。
そしてこのことを伝えられた者も、他の者に伝えさせるように。
貴方に任せます』
「はい。これから直ぐに伝えに行きます」
そう云って、足早に去っていった。
私達が任務を開始するのは本日の二十二時。
余りにも急過ぎるが、タイムリミットは明日までなのだから今日中に決着をつけるしか無い。
今のうちに武器や刃物の補充、作戦も立てる必要がある。
私も足早に、幹部室の前から去った。
今回も、その扉は開かない。
# # #
────集められたのは三十六人の構成員だった。
任務の内容は皆全員に説明した。
彼に待つ未来、私がその未来を見たということも、そして、標的の男が持つ異能力も。
夜はマフィアの時間だ。
今日は晴天で、夜空には無数の星が輝きを放っている。
敵の拠点は直ぐ目の前。
指揮は私が執る。
───さあ、いよいよ開幕だ。
『皆さん。必ずや、私達で決着をつけましょう！我等に勝利を！』
『任務、開始です───！』
────地獄とはきっと、このあとの世界のこと云うのだろう。
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
