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『そういえば明日の任務って結構重要なやつでしたよね』
「そうだ。全く。マフィアの密輸品を奪う人間とかとんだ命知らずだな」
『でも相手は異能力者でしょう？…とても危険ですよきっと。もしかしたら、死んでしまうかも』
「ハッ、俺も舐められたモンだ。帰ってきた時覚えてろ。必ず土下座して謝ることになるぞ」
『冗談ですよー』と笑い、葡萄酒をまた口に運んだ。Aの様子を見ると、酔いがまわってきたようだ。
グラスをなぞりながら、明日の任務の内容を思い出す。
───相川俊孝。男性。異能持ち。然し内容は不明。出身、不明。職業、不明。
不気味な程に不明な点が多い男だ。経歴は抹消されているため、恐らくは非合法に手を染めている可能性も高い。
『…でも私達マフィアって何時死ぬか分からないですからね。この世界で生きる以上、寿命で死ぬ可能性なんて零に近いでしょう』
「……そうだな」
死体など、もう散々見飽きたものだ。その内の一つに、自分達は何時か混ざるのだ。きっと、そう遠くはない。
赤い血を零しながら。冷たい地面に、横たわって。
グラスの中身を全部呷った。
ふと小さく、自分の名前を呼ぶ声がした。何だ？、と目線を向けると、伏せた目をして続けた。
『……中也さん。もし大切な人の命と心、どちらか一つだけしか守れないとして───私は、きっと、命を選ぶと思います』
「……なんとしても、生きてて欲しいってか」
Aはそう零した。遠くを見詰めるように。そこに無い何かが見えているように。
声はひどく寂しそうで、悲しそうで、今にも泣きそうな気がするのは気のせいだろうか。
『……例え、その人の心を切り裂いてでも。私は…守るべきものを、守ります』
その時。
ぐらり、と身体が傾くを感じた。瞬間、絨毯に身体が転がった。
───何だ、これ。
目が回る。指が動かない。
心臓が早鐘を打ち、額と背中からは汗が止まらない。
そしてやっと、注がれたものに毒が入っていたのだと知る。
自分の、部下に。
「……お、まえ」
『……ごめんなさい。どうか私を、許さないでください』
そこで、自分の意識は途切れた。
今にも泣き出しそうな、声だけを置き去りにして。
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
