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思考を巡らせる。
───爆弾を使うか？
否、この部屋の中で使うには私が危険だ。
投げて直ぐに脱出するにしろ、此処は二階。下は植木などのクッションになるものは何も無い。
考えて暫く黙っていると、男は再び口を開いた。
「…お前、演じている気は無かっただろう」
『ええ。自分すら騙せないのなら、他人など騙せませんし』
「あれは人間そのものが変わったようだったぞ」
『自分を殺すのは慣れてますので。…色んな意味で』
先程と同じような笑みを貼り付ける。
…もう奇襲は仕掛けられない、か。
今更ナイフや銃を使っても、相手が異能を使ってきたのなら太刀打ち出来ない。
私が此処で殺されてしまったら過去には戻れなくなるのだから、最悪のケースは避けるしかない。
どのループにおいても、最優先されるのは「自分の命」だ。
絶対に殺されないように、私が自分の手で自分を殺し、そうして過去に戻れるようにと。
『………嗚呼、またか』
私はまた、失敗した。
深く溜息を吐いた。
悔しさというより、そこにあるのは失望だった。
自分の無力さを突きつけられ、改めて自分が愚かだと知る。
…戦闘でも演技でも駄目、だったか。
男はその様子をただじっと見詰め、次の言葉を待っている。
それに応えるように、私は全て告白する。
『…私の異能力は、時間の巻き戻しです。
だから貴方に会うのは初めてじゃない』
「───な」
『私の大切な人は貴方に殺されたんです。…ねえ、もちろん"対策"はあったのでしょう？』
「───…ポートマフィアが襲って来ることは想定済みだ」
『………』
琥珀の瞳を睨む。
頭に浮かぶのは彼の死体。
あの時私を庇ってしまった、彼。
出た私の決断は───
『…降参します。もうこの現在に用は有りません』
「……真逆、戻るのか…？」
『ええ』、と頷き肯定する。
男は驚愕を顔に浮かべた。
小唄を口ずさむように、詠唱を唱えていく。空間が歪むのを見ながら、私の指先は白いティーカップを手にする。
カップに紅茶を注いでいく。
いい香りが鼻を包む。
その紅茶は男に出したのと同じ───毒を入れたもの。
彼は全てを察したようだ。
「……俺とお前は似ている」
『───……』
「目的の為なら手段を選ばない。私にしてきたことも、今お前がしていることもそうだろう」
男の指先は、自分の前に置かれた白いカップを弾いている。
カツンカツンと鳴る音は、まるで秒針の音にも似ていた。
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
