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男に対する湧き上がる殺意。それは炎よりも熱く、熱く燃え上がる。
早くこの手でその喉笛を掻き切ってしまいたいのに。
この手で弾丸を額に撃ち込んでしまいたいのに。
それは私の力じゃ及ばない。
そんな自分に、余計に腹が立つ。
『……私の為になんて、死んで欲しくなかった……っ』
遅れてやってくるのは後悔と喪失感。
気持ち悪い。頭が痛い。訳が分からない。彼の死体など、もう見たくなかったのに。
何を間違えた。何がいけなかった。何をすれば良かった。
分からない、分からない。上手く、思考が纏まらない。
涙が零れて止まらない。握った彼の手は、冷たくて冷たくて。
唇を血が出る程噛み締める私に、男は云う。
「この結末は、お前がいたからだ」
『……私、が……？』
声は凍えるくらい冷たく、冷や水を浴びせられた気分だった。
その声は、現実へと目を向けさせる。
「…庇わなくては為らない存在が、此処にいたからだ」
『違、わた、しは……！』
「お前が此処に居なければ、この男は生きていた」
全てを見透かしたような琥珀色の瞳が刺さる。
やめろ。それ以上、何も云うな。
それは声に出来ず、ならず。代わりに嗚咽と共に息が吐き出されるだけ。
頭の中がぐるぐる回って、今にも吐いてしまいそうで必死に堪えた。
……知っていた。この男の云う通りだ。
『私、が……いた、から……っ』
男は肯定した。
私が此処にいてしまったから、彼は私の為に死ぬことになった。
…そんなの、私が許さない。
何のために巻き戻したか分からないじゃないか。
男は目を細めたあと、今度は私を憐れむように口を開いた。
そして、男が取り出したのは───毒薬だ！
「…異能を酷使しすぎた。お前も此処で、男と共に死ぬと良い」
不味い。それを浴びせられたら、間違いなく私は死ぬ。
異能を発動出来ない。
過去に戻れなくなる。彼を救えなくなる。
とうにからっきしの体力と腕力を振り絞って、私は自分の武器であるククリナイフを男の腕に投げた。
『───させない』
「……っ！？まだそんな力が…！」
くの時に曲がった刃渡り三十糎程のナイフが、狙った通りに男の腕に刺さった。
血はどくどくと流れ、地面にシミを作っていく。
液体の入った小さな瓶が、赤く染まった地面に遠く転がっていった。
その様子を見詰めながら、私はこれからすることを決めた。
覚悟なんて必要なかった。彼が生きる未来を救う、それだけの思いで充分だ。
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
