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脳裏に思い出したくもない奴の顔がチラついて、舌打ちをして台所に帰る。
携帯電話を、Aのクローゼットに戻した。
再開した料理も徐々に完成に近付いてきた。
トマトソースの良い香りが充満し、食欲を刺激してくる。
玄関を開ける音。Aが帰ってきたのだ。昨日よりも少し早い。
「…おかえり」、と俺が声をかけるのは変だが。
『ただいま帰りました。……もしかして…夕御飯、ですか？』
「それ以外に何に見えンだ？その手じゃ料理なんて出来ねェだろ」
『…頑張れば出来ると思って早く帰ってきたんですけれど』
「不要だったな。座っとけ」
複雑そうな顔をして席に座る。
『貴方がこんなことする必要無いと云ったでしょう……』
「煩ェ。俺がやりたいんだからやらせとけ」
Aはこめかみを押さえ、渋々納得するように溜息をついた。
出来上がったパスタをよそり、机に並べていく。
『…いただきます』と。Aはきちんと手を合わせて口へ運んだ。
『…美味しい、です』
「ん。そりゃ良かった」
つい先日したやりとり。今夜は台詞が逆だった。
同じように自分もパスタを食べてみる。
我ながら美味く出来た、と思うが、やっぱり此奴が作る方が何倍も美味いとも思った。
フォークを皿でくるくる回す様子を見ると、まだ少しばかりぎこちないが、朝よりはだいぶ使えているようだ。
『中也さん』
「何だ」
『……ありがとうございます』
「…ん」
急に顔を出した何時ものAらしさに、安堵にもよく似た嬉しさがあった。
# # #
皿をすすぐ水音だけが、真っ白な空間に吸い込まれていく。
皿洗いも俺がやろうと思っていたが、『私はもう大丈夫ですから』、と云って聞かなかった。
今朝は皿を割る音がよく響いていたが、今はまだそんな音は聞こえない。
『……それで。私から何か聞きたいんでしょう？』
口を開こうとした途端、自分より先にAが声を出す。
「…全部お見通しって訳か」
頷いて、静かに肯定した。
本質を突けば、此奴はきっと自害を選ぼうとするだろう。
俺と争う気がないことを約束したAは、俺には絶対に手は出さない。
だからああして、自分の首で脅している。
なら、本質を避けて質問をすればいい。はいかいいえの二択で選ばせる。
「はいかいいえの二択で良い。
標的である相川俊孝とは血縁関係である？」
『いいえ』
「質問を変える。
───だが、因縁の相手である？」
『……は、い』
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
