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不安が頭の中をぐるぐる。
私の王子様は彼だが、彼のお姫様は私じゃ無かったり───
「えい」
『ぎゃあ!?』
背後から頬をつつかれた途端、硝子の靴は消滅した。そんなこと出来る人間一人しかいない。
『だ、太宰さん…っ!!なんてことするんですかあ!』
「うふふ。ガラスの靴?可愛いことするね」
『云わないでください…っ!!』
全てバレた。
嗚呼もう、恥ずかしくて顔から火が出そう。
彼は笑ったまま私の隣に座る。さっきの恨みを込めて、ジト目のまま問うた。
『如何して今日は何時もの場所ではないんですか?』
「気分転換、かな。今日は星が綺麗だからね。あのビルに囲まれた四角の夜空では勿体無いだろう?」
『そうですけど……でもこんなことしてるの、見られたら…』
「その時はその時さ。
私が心中に誘ってきたとでも云えばいい」
『胡散臭い……』
ひどいなぁ、と彼はくすくす笑った。
そしてふと彼の細くて長い指先が伸びてきて、私の手に重ねられる。
「ふふ。でも彼処まで作れたの偉いじゃないか。前よりも使い方が上手くなったね」
『あ、ありがとうございます…』
「硝子の靴は履けなくとも、君はシンデレラだよ」
額に短く接吻を落とす。
また顔が熱くなった。
砂糖でも食べてるみたいに、口の中がなんか甘い気がした。嗚呼、足元までふわふわする。
「此処は海が近いからね。こんなに大きな水の側だと異能も使いやすくなるんじゃないのかい?」
『まあ、そこにある液体から使うのなら割と簡単ですからね……発動もうんと早くなりますし。
だから簡単な触媒として水は何時も持ち歩いてます』
鞄から水の入ったペットボトルを取り出した。
蓋を開け、中の水を掌にゆっくりと垂らしていく。
もう彼に触れられていないから、垂らした水は凍っていく。
パキパキと音を立てて出来たのは。
『お、お花ぁ…?』
「下手くそ」
『あああ!私のお花になんてことを!』
所詮500mlの水だから出来たのは小さな花だったが、彼の云う通り下手くそだった。花弁は曲がっていて、大きさもまだらだ。
そんな花は彼がちょんと触れてただの水へと帰った。
溜息をつく。自分の異能力なのに、如何してこうも下手くそなのか。
「よし。久しぶりに特訓だ。あの木を撃ってごらん」
『え!?は、はい!』
立ち上がって彼から距離をとり、指をさされた方へ掌を向ける。
空中に十
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お湯(プロフ) - 桜月さん» わわ、ありがとうございます…!1話から…!とても嬉しく思います!たくさん感想をくださりとても幸福です。こちらこそありがとうございました……!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 櫻宮麗子さん» これからの彼女たちに幸福があるといいですね…!読んでくださりありがとうございました〜!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
桜月 - 完結おめでとうございます!1話からとても素敵な作品だなと読ませて頂きました!最終回の感動と終わっちゃうんだなぁという寂しさが…!お疲れ様でした!もし次回作などあれば、楽しみにしてます!ありがとうございました!(*^^*)長文失礼しましたっ! (2019年9月9日 16時) (レス) id: 0b13d6cbae (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮麗子(プロフ) - 最終回、おめでとうございます!救われた彼女がこれからどうなっていくのかが気になります・・・!また彼女たちに会えることを楽しみにしていますね、本当にお疲れ様でした! (2019年9月9日 8時) (レス) id: 3300853b00 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - ゆきんこさん» ありがとうございます…!更新が遅れて申し訳ありませんが、どうか完結までお付き合いいただけると幸いです(*^^*)更新精一杯頑張ります…! (2019年8月27日 22時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お湯 | 作成日時:2019年6月2日 10時