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「……流石は貴方の頭脳ですね」
眼鏡の淵を手で抑えながら、静かに彼はそう云った。
「……貴方の仰る通り…特務課は彼女の監視を目的として組織に入らせた。彼女の持つ力は桁違いでしたから。あの力を持つ彼女を、放った儘にしておけなかった」
「だから使い潰す気だったのだろう?使い潰して、あの子に死んでもらう。何故ならあの子は得一級危険異能力者。特務課が持った核爆弾。監視しているとは云え、手元に置くには危険すぎる。今回彼女に任務を任せたのも、あわよくば共倒れが狙いだった。死んでくれたらそれでラッキー。違うかい?」
「……全て、貴方が正解です。……でも、我々は間違えてしまった」
彼は俯いて、肩を震わせた。
声には確かに、怒りと呼ぶべき感情が入り混じっていた。
「彼女は、優しすぎたのです」
「……」
「監視…?彼女に人など殺せる訳がない。あれ程までに他人を思いやる人間を、僕は、知らない…!」
「安吾──…」
「彼女があの力を一般市民に振るった場合、我々には殺害命令が出されていました。だから彼女を特務課は監視していた。
けれど…!そんな日など、何時まで経っても来る筈が無い…!」
感情を爆発させたような。そんな、顔だった。
初めてだ、こんな彼を見るのは。
何時だって冷静沈着だった彼が、嗚呼、こんなにも、あの子一人に取り乱されている。
「彼女ほぼ一人にあの大規模な任務を任せたこと。僕は、止めたんです…!人を傷付けることを最も恐れた彼女に、如何して殺人が出来るのだと…!彼女は人よりも少し、大きな力を持っただけの、ただの人間だ…!」
「なのに、上の者は彼女に死ねと云うのです!彼女が持つ異能を、恐れたが故に!」
───強くなるには、如何したら良いですか。
そう云った彼女が恐れていたこと。それは、自分の力で他人を傷付けてしまうこと。
だから私は、あの時。異能の扱い方を教えた。
人を殺す為でも無く。他人を、守る為に。
嗚呼。安吾も、あの子をこんなにも大切に思っていたのか。
「……安吾。君の望みは?」
「……僕の、望みは………あの子の、幸福です。あの子が幸福に、笑ってこれからを生きてくれるのなら…それ以上、望むものは有りません」
「………分かった」
さあ。本番は、これからだ。
だって坂口安吾の望みは、自分の望みと同じだから。
川端Aの幸福。それを、私達は心の底から願っている。
「取り引きだ、安吾。───Aを、武装探偵社に頂戴」
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お湯(プロフ) - 桜月さん» わわ、ありがとうございます…!1話から…!とても嬉しく思います!たくさん感想をくださりとても幸福です。こちらこそありがとうございました……!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 櫻宮麗子さん» これからの彼女たちに幸福があるといいですね…!読んでくださりありがとうございました〜!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
桜月 - 完結おめでとうございます!1話からとても素敵な作品だなと読ませて頂きました!最終回の感動と終わっちゃうんだなぁという寂しさが…!お疲れ様でした!もし次回作などあれば、楽しみにしてます!ありがとうございました!(*^^*)長文失礼しましたっ! (2019年9月9日 16時) (レス) id: 0b13d6cbae (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮麗子(プロフ) - 最終回、おめでとうございます!救われた彼女がこれからどうなっていくのかが気になります・・・!また彼女たちに会えることを楽しみにしていますね、本当にお疲れ様でした! (2019年9月9日 8時) (レス) id: 3300853b00 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - ゆきんこさん» ありがとうございます…!更新が遅れて申し訳ありませんが、どうか完結までお付き合いいただけると幸いです(*^^*)更新精一杯頑張ります…! (2019年8月27日 22時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お湯 | 作成日時:2019年6月2日 10時