検索窓
今日:54 hit、昨日:0 hit、合計:102,856 hit

43* ページ43

「……流石は貴方の頭脳ですね」


眼鏡の淵を手で抑えながら、静かに彼はそう云った。


「……貴方の仰る通り…特務課は彼女の監視を目的として組織に入らせた。彼女の持つ力は桁違いでしたから。あの力を持つ彼女を、放った儘にしておけなかった」

「だから使い潰す気だったのだろう?使い潰して、あの子に死んでもらう。何故ならあの子は得一級危険異能力者。特務課が持った核爆弾。監視しているとは云え、手元に置くには危険すぎる。今回彼女に任務を任せたのも、あわよくば共倒れが狙いだった。死んでくれたらそれでラッキー。違うかい?」

「……全て、貴方が正解です。……でも、我々は間違えてしまった」


彼は俯いて、肩を震わせた。
声には確かに、怒りと呼ぶべき感情が入り混じっていた。


「彼女は、優しすぎたのです」

「……」

「監視…?彼女に人など殺せる訳がない。あれ程までに他人を思いやる人間を、僕は、知らない…!」

「安吾​──…」

「彼女があの力を一般市民に振るった場合、我々には殺害命令が出されていました。だから彼女を特務課は監視していた。
けれど…!そんな日など、何時まで経っても来る筈が無い…!」


感情を爆発させたような。そんな、顔だった。
初めてだ、こんな彼を見るのは。

何時だって冷静沈着だった彼が、嗚呼、こんなにも、あの子一人に取り乱されている。


「彼女ほぼ一人にあの大規模な任務を任せたこと。僕は、止めたんです…!人を傷付けることを最も恐れた彼女に、如何して殺人が出来るのだと…!彼女は人よりも少し、大きな力を持っただけの、ただの人間だ…!」

「なのに、上の者は彼女に死ねと云うのです!彼女が持つ異能を、恐れたが故に!」


​───強くなるには、如何したら良いですか。

そう云った彼女が恐れていたこと。それは、自分の力で他人を傷付けてしまうこと。

だから私は、あの時。異能の扱い方を教えた。
人を殺す為でも無く。他人を、守る為に。

嗚呼。安吾も、あの子をこんなにも大切に思っていたのか。


「……安吾。君の望みは?」

「……僕の、望みは………あの子の、幸福です。あの子が幸福に、笑ってこれからを生きてくれるのなら…それ以上、望むものは有りません」

「………分かった」


さあ。本番は、これからだ。

だって坂口安吾の望みは、自分の望みと同じだから。
川端Aの幸福。それを、私達は心の底から願っている。



「取り引きだ、安吾。​───Aを、武装探偵社に頂戴」

44*→←42*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (285 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
409人がお気に入り
設定タグ:文スト , 文豪ストレイドックス , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

お湯(プロフ) - 桜月さん» わわ、ありがとうございます…!1話から…!とても嬉しく思います!たくさん感想をくださりとても幸福です。こちらこそありがとうございました……!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 櫻宮麗子さん» これからの彼女たちに幸福があるといいですね…!読んでくださりありがとうございました〜!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
桜月 - 完結おめでとうございます!1話からとても素敵な作品だなと読ませて頂きました!最終回の感動と終わっちゃうんだなぁという寂しさが…!お疲れ様でした!もし次回作などあれば、楽しみにしてます!ありがとうございました!(*^^*)長文失礼しましたっ! (2019年9月9日 16時) (レス) id: 0b13d6cbae (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮麗子(プロフ) - 最終回、おめでとうございます!救われた彼女がこれからどうなっていくのかが気になります・・・!また彼女たちに会えることを楽しみにしていますね、本当にお疲れ様でした! (2019年9月9日 8時) (レス) id: 3300853b00 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - ゆきんこさん» ありがとうございます…!更新が遅れて申し訳ありませんが、どうか完結までお付き合いいただけると幸いです(*^^*)更新精一杯頑張ります…! (2019年8月27日 22時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:お湯 | 作成日時:2019年6月2日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。