検索窓
今日:55 hit、昨日:0 hit、合計:102,857 hit

42* ページ42

彼女と出逢った頃を思いだしながら私は長く息を吐いた。
自ら別れを告げたときの彼女の表情が脳に焼き付いて離れない。何度もあの涙に濡れた声が脳に響く。

彼女が出て行って五日が経った。電話も繋がらない。

今日。私は決意を固め家を出て、背後の木に凭れ掛かってある人を待っていた。
今いる場所は海から近く、潮風が頬を撫でた。


「……今晩は、太宰君。…久しぶりですね」

「今晩は、安吾。来ると思っていたよ」


にこにこと何時もの得意な笑みを貼り付けて振り向く。
其処には彼女と同じ現異能特務課所属、自分のかつての同僚、坂口安吾がいた。

月明かりに照らされた表情は私とは反対に真剣そのものだ。


「……僕は耳を疑いましたよ。真逆貴方が彼女と交際しているなんて…」

「うふふ。それは"見せ付けた"かいがあったなあ」

「……これでも僕は貴方に感謝しているんですよ。彼女を助け出してくれたこと」

「………感謝?」


その単語に指先がぴくりと動いた。
直ぐに口から出たのは乾いた笑いだった。嗚呼、笑いが止まらない。


「あはは、面白いこと云うなあ。感謝?君が?私に?」

「​───…」

「特務課の計画を壊した私に感謝とは…冗談も程々にし給え」


彼は表情を変えず、ただ私を見ていた。
私も貼り付けた笑みを崩さず、言葉を続けた。


「あの時彼女を見付けるには苦労した。色々な手を使ったよ。でも、私には出来た。けれど、もっと早く見付けたかったと酷く後悔したよ」

「……」

「私が駆けつけた時、彼女のお腹が抉れていたんだ。骨も折れて、大きな切り傷もあって。血溜まりのなかに、彼女がいた。もう助からないと思ったよ」

「…それを、貴方が」

「幸い探偵社からはそこ迄遠くは離れていなかったから、急いで彼女を与謝野さんの所に運んでいった。与謝野さんの異能がなかった確実に死んでたよ、彼女。​死ななくて残念だったね?」


彼女を見付けたときの記憶が蘇る。
彼方此方に転がる死体、散らばる巨大な氷の破片。拠点の奥に、床を赤く染めて彼女はいた。

そんな状態の彼女を見つけた時​、心臓が凍りついたような錯覚を覚えた。
絶対に死なせはしないと、急いで彼女を抱き上げ探偵社に連れていったのだ。


「彼女の正体。…貴方は矢張り分かっていたのですね」

「嗚呼。彼女の正体は​───得一級危険異能力者だ」

出逢った時から、全て知っていた。

「彼女をスカウト?そんなのただのこじつけだ。実際は監視が目的だったんだろう?」

43*→←41*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (285 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
409人がお気に入り
設定タグ:文スト , 文豪ストレイドックス , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

お湯(プロフ) - 桜月さん» わわ、ありがとうございます…!1話から…!とても嬉しく思います!たくさん感想をくださりとても幸福です。こちらこそありがとうございました……!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 櫻宮麗子さん» これからの彼女たちに幸福があるといいですね…!読んでくださりありがとうございました〜!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
桜月 - 完結おめでとうございます!1話からとても素敵な作品だなと読ませて頂きました!最終回の感動と終わっちゃうんだなぁという寂しさが…!お疲れ様でした!もし次回作などあれば、楽しみにしてます!ありがとうございました!(*^^*)長文失礼しましたっ! (2019年9月9日 16時) (レス) id: 0b13d6cbae (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮麗子(プロフ) - 最終回、おめでとうございます!救われた彼女がこれからどうなっていくのかが気になります・・・!また彼女たちに会えることを楽しみにしていますね、本当にお疲れ様でした! (2019年9月9日 8時) (レス) id: 3300853b00 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - ゆきんこさん» ありがとうございます…!更新が遅れて申し訳ありませんが、どうか完結までお付き合いいただけると幸いです(*^^*)更新精一杯頑張ります…! (2019年8月27日 22時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:お湯 | 作成日時:2019年6月2日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。