【文スト】23:59

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「……ま、腹の方は見た目ほど深くは無かったけど、それでも…普通の医者じゃ間違いなく死んでたよ。あと少しでも遅れてたら、アタシでも治せてたかどうか……腹だけじゃない。片腕も折れてたし、太股には大きな切り傷。弾丸が掠った跡。…おかげでほぼ全身血塗れだ。…運んで来た時の太宰のあんな顔、初めて見たよ」

『………』

「何があったかは聞かないが……アンタが悪い奴じゃ無いってことは、アタシにも良く分かる。…けど」


私の身体をじっと見詰めて言葉を詰まらせたあと、再びゆっくりと口を開いた。
その顔はひどく痛ましげに歪めらている。


「……そんな奴があんなボロボロになってんのは…アタシは見てらんないよ」

『​───……。その言葉だけで、救われますとも。…有難うございます。与謝野さん』

お礼を云った私に彼女は目を見開き、やがて溜息をついた。

「……ッたく…ついアタシらしくないこと云っちまったよ。直ぐに太宰を呼んでくるから、大人しくしてな」

『はい。本当にお世話になります』


与謝野さんはひらりと手を振って出ていった。


窓の外から見えた空は紫がかった橙色をしていて、今はもう夕方になったのだと知る。

特務課は今どうなっているのだろう。
あの時逃がした、私と共に任務を任された人達は本当に無事か？
犯罪組織は本当に壊滅したのだろうか？

そんな不安が、私の心を鷲掴みにして離さない。

安吾さんに連絡を入れたいところだが​───それは太宰さんが医務室に入ってきたことで出来なかった。


「……良かった。目が覚めたのだね」

『……はい。本当に、有難うございます…太宰さん』

「……うん。君が生きてくれて…良かった」


目に自然と涙が浮かんだ。抱き締めてくれる体温が温かい。心までも溶かされてしまいそうだ。
彼が心の底から安心したような顔を浮かべてくれたことが嬉しくて、抱き締める力が勝手に強くなった。


「安吾には君が無事だってことは連絡して置いたよ。取り敢えず暫く休ませることもお願いしてきた」

『……！有難うございます…！』


嗚呼そっか、太宰さんは昔から安吾さんとの知り合いだと云っていたから。

連絡が入っているのなら安心だ。


「……さて、行こうか」

『え、何処にですか…？』

「私の家」



＊ ＊ ＊



云った通り、本当に連れてこられたのは彼の住むアパートだった。

玄関を開け部屋に入り、座らされる。



『あの、太宰さん…如何して私を貴方の家に…？』

「ねえA」

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