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​───出会った時の感情を、今でも覚えている。

自分の周りの全てが凍り、自分の涙さえ氷の粒へと姿を変えたあの日の夜。
今思えば、異能力の暴走だったのかも知れない。
何れにしても初めてとことで、何が何だか分からず、自分でも理解出来ないものにただ怯え、人目のつかない所で蹲って泣いていた。

その時だ、あの人が触れてくれたのは。


『……貴方、は…』

「私の名は太宰。太宰治だ。ただの通りすがりの男さ」


私の頭を一撫でした瞬間、自分のまわりを凍らせていたものは霧散した。

それだけで、世界が色付いていく感覚がして。
その瞳と、光のような眩しさに​。一目で、恋に落ちてしまった。


安堵よりもまず、自分に湧き出たものが恋情だなんて。
彼に云ったら、笑われてしまいそうだけれど​───



* * *



目覚めた私の視界に最初に入ったのは、見たことも無い天井だった。
身体の下が柔らかくて、その感触で自分はベッドの上にいるのだと知った。

何処だ此処、と焦り飛び起きたが、すぐさま頭に激しい痛みが走り、その場で痛む場所を抑えた。

痛む頭で状況確認をするよりも先に、女の人が部屋に入ってきた。


「…目が覚めたかい、アンタ」


綺麗な女性だなあ、と思った。整った顔立ちに、切り揃えられた美しい黒髪。金属の蝶の髪飾りがよく似合っていて、空を羽ばたく本物の蝶のように可憐な女性だった。



『貴方は…』

「アタシは女医の与謝野晶子。此処は武装探偵社の医務室さ」



彼女から放たれた言葉で、記憶が戻っていく感覚がした。
その時まで見ていたものが、脳を巡るような。



『た、探偵社…!?というか、私、何で生きて…!』

「それはアタシの治癒能力の異能だ。……太宰が血相変えてアンタを此処まで運んで来たんだ」

『太宰さんが……』


あれは幻聴でも幻覚でも無かったのか。


『嗚呼、遅れて申し訳ございません。私の名前は川端Aです。えっと、与謝野さん。治していただき、本当に有難うございました』

「……それは良いけどねェ……アンタ、まだ二十歳も迎えたばかりってくらいだろう?」

『は、はい…』

「まァ、アタシはアンタの詳しい事情は知らないが…。……たったそれくらいの女が、腹に穴開けて帰ってくるモンじゃないよ」

『……!』



反射的に服を捲り、自分の腹部を見た。
傷跡も残っていなければ痛みも無い。


それ迄気が付かなかったが、服も新しいものに着替えられていた。
真っ白な、ワイシャツに。

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設定タグ:文スト , 文豪ストレイドックス , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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お湯(プロフ) - 桜月さん» わわ、ありがとうございます…!1話から…!とても嬉しく思います!たくさん感想をくださりとても幸福です。こちらこそありがとうございました……!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 櫻宮麗子さん» これからの彼女たちに幸福があるといいですね…!読んでくださりありがとうございました〜!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
桜月 - 完結おめでとうございます!1話からとても素敵な作品だなと読ませて頂きました!最終回の感動と終わっちゃうんだなぁという寂しさが…!お疲れ様でした!もし次回作などあれば、楽しみにしてます!ありがとうございました!(*^^*)長文失礼しましたっ! (2019年9月9日 16時) (レス) id: 0b13d6cbae (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮麗子(プロフ) - 最終回、おめでとうございます!救われた彼女がこれからどうなっていくのかが気になります・・・!また彼女たちに会えることを楽しみにしていますね、本当にお疲れ様でした! (2019年9月9日 8時) (レス) id: 3300853b00 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - ゆきんこさん» ありがとうございます…!更新が遅れて申し訳ありませんが、どうか完結までお付き合いいただけると幸いです(*^^*)更新精一杯頑張ります…! (2019年8月27日 22時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:お湯 | 作成日時:2019年6月2日 10時

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