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視線を向けると彼は楽しそうに笑っている。拳を振り上げ、堪らなくなって云い返す。
『誰がぽんこつですか!大体貴方に云われたく───』
「うんうん、御免ね。ほら、よしよし」
壁に寄り掛かる私の腕を引っ張って、彼へと飛び込む形へ。そのまま私の頭をくしゃくしゃに撫でる。
子供扱いしないでください、と怒りたくもなるが何だかんだで赦してしまっている。
やがて長い指は髪から顎へと移り、私の瞳を真っ直ぐに見詰められる。
交わる目線。恥ずかしすぎて死んでしまう。
「…ふふ。かぁわいい」
彼の顔が近付いて、唇を重ねる。
矢っ張り恥ずかしくて離れようとした私の腰を捕まえ、口付けはあっという間に深くなる。
私達は何時もこんな感じだ。
くだらない会話をしたあと、こうして接吻を繰り返す。
そんな、関係。
『んっ、───……っ、む!?…』
「……っは、…」
壁に押し付けられて、舌を捩じ込まれる。
彼の舌先が私の上顎をなぞって、ぞわりと背筋が震えた。
嗚呼、文字通り、此の儘食べられしまいそうだ、なんて。
心臓が煩い。顔からは火が出そうだ。涙で視界がぼやけている。
…何度もしているのに、これこそ本当に少しも慣れない。というかこの人の接吻が上手すぎるのだ。
漸く離れた唇に、銀の糸が輝く。
荒い息を吐きながら、キッと睨みつけた。
「ごめんね、苦しかった?」
『なっがいんですよ莫迦ぁ!!』
胸板をぽかぽか殴っても口元を緩めるだけで反省の色は全く見えない。
…こっちの気も知らないで。嗚呼、本当に悔しい。
悔しい、のに。幸せを感じてしまう私がいる。
『……あああもう…!』
ぐりぐりと胸板に頭を押し付けた。
煩い心臓の音が聞こえてしまうのではないか、なんてことが頭を過ぎったが構ってる暇はなかった。
彼は小さく笑ったあと、私の額に短く接吻を落とす。
「…さて。もう時間だ。早くお帰り、シンデレラ。
魔法が解けてしまう前に」
『…はい。おやすみなさい、太宰さん。良い夢を』
最後にまた、唇が優しく触れ合う。
腕時計に目をやる。現在の時刻は、日付が変わる一分前。
───23:59。
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お湯(プロフ) - 桜月さん» わわ、ありがとうございます…!1話から…!とても嬉しく思います!たくさん感想をくださりとても幸福です。こちらこそありがとうございました……!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 櫻宮麗子さん» これからの彼女たちに幸福があるといいですね…!読んでくださりありがとうございました〜!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
桜月 - 完結おめでとうございます!1話からとても素敵な作品だなと読ませて頂きました!最終回の感動と終わっちゃうんだなぁという寂しさが…!お疲れ様でした!もし次回作などあれば、楽しみにしてます!ありがとうございました!(*^^*)長文失礼しましたっ! (2019年9月9日 16時) (レス) id: 0b13d6cbae (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮麗子(プロフ) - 最終回、おめでとうございます!救われた彼女がこれからどうなっていくのかが気になります・・・!また彼女たちに会えることを楽しみにしていますね、本当にお疲れ様でした! (2019年9月9日 8時) (レス) id: 3300853b00 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - ゆきんこさん» ありがとうございます…!更新が遅れて申し訳ありませんが、どうか完結までお付き合いいただけると幸いです(*^^*)更新精一杯頑張ります…! (2019年8月27日 22時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お湯 | 作成日時:2019年6月2日 10時