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彼の香りと、焚いたアロマの匂いが混ざってどきどきする。
薄暗い部屋の中、後ろから抱き締められる形になりながら、流れる映像を見詰める。
時々机に置かれた菓子に手を伸ばしながら、幸せを噛み締めた。
時々勢い良く出てくる幽霊に吃驚して肩を揺らした。
「意外だなぁ。てっきりぎゃーぎゃー騒ぐかと思った」
『これくらいで騒ぎません!特務課を舐めないでください!』
「それとこれとは別だと思うのだけれど…」
ホラーよりも怖かったことをもう朝に体験した気がする。
確かに幽霊には吃驚はするものの、悲鳴をあげる程ではない。…というか、太宰さんと密着しすぎてるせいで殆ど集中出来ていないせいでもある。
映像なんかよりも心臓がどきどきして煩いのだ。
「えい」
『あ、ちょ、目を塞がないでください!前が!』
「口を塞いであげようか?」
『えい』
「ごふぁっ。……ごめん私が悪かった」
肘は無事彼にヒット。後から呻き声が聞こえてくるけど気にしない。
映画も終盤に差し掛かってきた頃。
映るのは一組のカップルだった。この物語をざっくり説明するとこうだ。ある男女二人が雨宿りする為に寄った幽霊屋敷に閉じ込められ、脱出しようとしつつホラーな体験をするという内容だった。二人は無事に脱出成功。何時も通りの日常が返ってきたようだ。
画面の中で二人、幸せそうに笑い合っている。
その様子をぼんやりと見詰めながら、ぽそりと云った。
『………ねえ太宰さん』
「何だい?」
『…私達の関係は、何と云うのでしょう』
私達は恋人ではない。付き合ってなどいない。
こうして触れ合って、接吻までしているのに。
私は彼に一度たりとも「好き」だと云われていないのだ。
その癖にああいうことを彼は平気でしてくるのだが、私も私で結局それを赦してしまっていた。
「可愛い」とか「愛しい」はよく云ってくれるのに。 如何してか彼は、愛の言葉だけは囁いてはくれなかった。
好き。愛してる。たった一言で良いのだ。
不安になる。私を愛してはいないのではと。
けれども接吻をしてくるのは、何時だって彼の方からだった。
分からない。彼の本心が。
知るのは簡単だ。
『貴方は私のことが好きなのですか』。こう一言聞けばいい。
なのに、それが出来なかった。
聞いてしまったら、この関係が終わってしまう気がしてならなかったから。
恋人ではないなら、この関係に一体どう名前を付けるのだろう。
「……欲しいの?この関係に、名前が」
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お湯(プロフ) - 桜月さん» わわ、ありがとうございます…!1話から…!とても嬉しく思います!たくさん感想をくださりとても幸福です。こちらこそありがとうございました……!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 櫻宮麗子さん» これからの彼女たちに幸福があるといいですね…!読んでくださりありがとうございました〜!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
桜月 - 完結おめでとうございます!1話からとても素敵な作品だなと読ませて頂きました!最終回の感動と終わっちゃうんだなぁという寂しさが…!お疲れ様でした!もし次回作などあれば、楽しみにしてます!ありがとうございました!(*^^*)長文失礼しましたっ! (2019年9月9日 16時) (レス) id: 0b13d6cbae (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮麗子(プロフ) - 最終回、おめでとうございます!救われた彼女がこれからどうなっていくのかが気になります・・・!また彼女たちに会えることを楽しみにしていますね、本当にお疲れ様でした! (2019年9月9日 8時) (レス) id: 3300853b00 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - ゆきんこさん» ありがとうございます…!更新が遅れて申し訳ありませんが、どうか完結までお付き合いいただけると幸いです(*^^*)更新精一杯頑張ります…! (2019年8月27日 22時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お湯 | 作成日時:2019年6月2日 10時