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大慌てで全力で謝る。
「嗚呼いいよ別に。此方こそ驚かせてしまって悪かったね。…あ、唇が」
『え、あ、ちょっと血が───!ん、』
切れて血が出た唇の端に口付ける。
咄嗟の判断で、その後すぐに後悔した。
「………わお。接吻で治ると思ったの?」
『お、思ってません……』
心臓が煩い。恥ずかしくて涙が出そう。
嗚呼もう、何でこんなことしたんだ。頭大丈夫か?いや、多分彼よりは大丈夫だ。
口元を押さえながら、半泣きの状態でまた「ぶって本当に御免なさい」、と謝った。
「いや。それは良いんだ。良いんだけれど───」
『はい?』
「昨日の夜のこと、覚えてる?」
昨日。夜。単語を復唱した。
途端、ぶわ、と顔が真っ赤になる。
それは走馬灯のように、昨夜あった出来事が頭をまわる。
ぐるぐる、ぐるぐる。記憶が巡る。ただ今大混乱中。
───そう、だ。私、酔って太宰さんの家に押し掛けて、そのまま寝ちゃって───あれ、指を噛んだのって、私だっけ?
「つまりアレだろう?君。
───酔っても記憶が残るタイプ」
『…う、ああ…、ああぁぁああああ!!!!
忘れてください!!今すぐに!!』
「ええ?可愛いかったのになぁ。酔うとあんなに子供みたいになるんだね、君」
『次はレンガで頭殴りますよ!!!』
朝から賑やかだ。
現在の時刻は07:25。
本日も晴れ。
窓から差し込む朝日は眩しく、小鳥の囀りが────
囀りが。
『え、ちょ、太宰さん!貴方、お仕事は!?』
「うん?私は今日休みだよ?」
『あ、ほんとですか……実は私も…』
安心して胸を撫で下ろす。
私の言葉に目を見開いたあと、彼はにっこり笑った。
それだけで、後の言葉が分かった気がした。
「じゃあ君の一日、私が貰っちゃおうかな」
『は、はい…どうぞ……貴方に、あげます…』
私が喜ぶものじゃ罪滅ぼしにもならないなぁ、と片隅で思っては笑い返した。
* * *
とんとんと、規則正しい包丁の音が部屋に響く。
刻んでいるのは人参だ。
今いるのは彼の家────ではなく。
私の住むマンションだ。
折角だから台所を借りて朝食を作ろうと思ったのに。彼の家の冷蔵庫は、見事に空っぽだった。
だから私の家に連れて来て、こうして朝食の準備をしている。
『駄目ですよ日頃ちゃんと食べないと』、なんて怒っても、「食べるのも面倒くさい」と巫山戯た返事を返された。
…絶対美味しいもの食べさせてやる。
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お湯(プロフ) - 桜月さん» わわ、ありがとうございます…!1話から…!とても嬉しく思います!たくさん感想をくださりとても幸福です。こちらこそありがとうございました……!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 櫻宮麗子さん» これからの彼女たちに幸福があるといいですね…!読んでくださりありがとうございました〜!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
桜月 - 完結おめでとうございます!1話からとても素敵な作品だなと読ませて頂きました!最終回の感動と終わっちゃうんだなぁという寂しさが…!お疲れ様でした!もし次回作などあれば、楽しみにしてます!ありがとうございました!(*^^*)長文失礼しましたっ! (2019年9月9日 16時) (レス) id: 0b13d6cbae (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮麗子(プロフ) - 最終回、おめでとうございます!救われた彼女がこれからどうなっていくのかが気になります・・・!また彼女たちに会えることを楽しみにしていますね、本当にお疲れ様でした! (2019年9月9日 8時) (レス) id: 3300853b00 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - ゆきんこさん» ありがとうございます…!更新が遅れて申し訳ありませんが、どうか完結までお付き合いいただけると幸いです(*^^*)更新精一杯頑張ります…! (2019年8月27日 22時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お湯 | 作成日時:2019年6月2日 10時