弱々しいのは ページ42
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太宰さんを見つめる。目を細めて、フイと視線を逸らされた。
開かれた唇から、「…私は…、」と、云い掛けてやめるように、それでも言葉を繋ぐ、固い声が鼓膜を揺らした。
「…知っていたとも。君が正義に憧れていたことくらい。出会ったときから君は、美しいものに手を伸ばそうとしていた。
でもそれは──純粋に、正義を目指すものだけでは無かった。
手を伸ばし、それに縋り付くような───…」
『…あは、貴方は何でもお見通しですね。敵わないなあ』
「…綺麗だと思った。弱々しくても、例え縋る想いをしていたとしても、憧れ、目指そうとすることが。…綺麗だと、思ったんだ。
…そんな綺麗なままで、君はいて欲しかった」
───弱々しいのは、果たしてどっち?
震える肩と指先、声。弱々しいのは、今の彼の方が余程───
『…だ、ざい、さん?』
永遠にも似た一瞬だった。
彼は口を開いた。
彼は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「君には、私を恨む資格がある」
『───』
「どうか恨んでくれないか。…後生だ。頼むから───…」
『───』
「拒絶してくれ。全部お前のせいだと、私を突き放してくれないか」
─────。
身を焦がしてしまいそうな程の熱。激情。
嗚呼、嗚呼───この感情は、きっと───「怒り」と、呼ぶのでしょうね。
『この莫迦!!!!』
体が勝手に動く。
立ち上がり、太宰さんの頬を両手でバシンと包んだ。
怒鳴り散らしたい衝動が、どうにも抑えられなくて。
無理矢理に目を合わせば、見開かれた鳶色の瞳がそこにはあった。
『違う!違う、違う!貴方は、間違っている!!』
『私は貴方を恨まない!私が貴方を、恨める筈が無い!!
だって貴方は、私の、私の───!』
いつだって彼は、私の英雄だったじゃないか。
『太宰さん、貴方の過去が、過去の私にとって"どうでもいい"存在だとしても!貴方自身は決してどうでもいい存在では無いのです!
私は貴方の傍にいたかった!ただそれだけです!だから…!』
「…っ!それでも、君は知りたくないことを知ってしまったじゃないか…!」
『それは私が何時かは受け入れなければいけないこと!今こうして、貴方の前に立っていることが答えです!』
「君に手を下させたのは私だ!私があの時、判断を間違わなければこんな事には…!」
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お湯(プロフ) - のりばやしさん» またコメントありがとうございます…!感動してくださったならなによりです!新作も頑張ります(*´`*) (2018年8月9日 19時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - もう一度失礼します!!完結おめでとうございます!!めちゃくちゃ感動しました!!話の終わらせ方が素晴らしい!!新作待ってます! (2018年8月9日 18時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - のりばやしさん» そう言ってくださり嬉しいです!ありがとうございます〜!! (2018年5月24日 18時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 話の展開と語彙力に心を動かされます。更新頑張ってください!!(*^ω^*) (2018年5月23日 19時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - すばるさん» 返信遅くなって申し訳ございません…!!ありがとうございます!!可愛い太宰さん、いいですよね…!(*´▽`*) (2018年2月23日 20時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お湯 | 作成日時:2017年10月9日 18時