一筋の光 ページ39
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自分がこの異能力を持ったとき──私は絶望を知った。
暴走こそはしなかったものの、一度だけ周りの物体を傷付けた事がある。あらゆるものがひび割れ、壊れ───その日から私は自分自身が怖くて仕方なかった。
何時か、私は人を傷付けるだろう、と。
結果私は傷どころか殺人にまで至ったのだから皮肉なものだ。
自嘲しながら、言葉を繋げる。
『それでもこの手で…人を助けたかった。皆を救いたかった。だから、探偵社に入った』
『でも…実際はそうじゃない。それは自分への偽りで、全て詭弁でした。』
「…」
『こんな異能力を持つ自分でも、人を助けることが出来るのだと思いたかった。破壊力しか持たない異能でも、何時かはきっと役に立つのだと。そう、自分に証明したかった。
そしてなにより…、自分の居場所が欲しかった』
人を傷付けないようにと、私は他人から一歩引いて関わるようにしていた。
その結果、自分に与えられたのは大きな孤独だった。
まわりに人がいない。自分だけが違う世界に隔絶されている。
虚無感だけが支配する人生。
…寂しかった、のかも知れない。
そんな時だ───武装探偵社の存在に出会ったのは。
それは私にとっての希望であり、一筋の光であった。
だから、縋った。
手を伸ばして、その光に縋りついた。
そして、現在の上司である「太宰治」に出会ったのだ。
『私が目指す正義は何処までもエゴで。私が満足したいだけのただの我儘。
…それを知っていながら知らんぷりをしていた。その事を、私を誘拐した女に指摘されて──心の底にあった感情が、どろどろに混ざってしまったんですよね。
目を背けていたことに、無理矢理に目を合わせられて、それがどうしようもなく気持ち悪くて、それをした女がどうしようもなく憎くて。それで私は…自ら女を殺した』
…嗚呼、私は何処までも狡い人間だ。
正義とは美しい。だから私は目指したのに──己の心は全く別の方向へ向かっていたのだ。
実際はどろどろと私欲に塗れたただのエゴ。
今となってはもう、笑える話だ。
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お湯(プロフ) - のりばやしさん» またコメントありがとうございます…!感動してくださったならなによりです!新作も頑張ります(*´`*) (2018年8月9日 19時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - もう一度失礼します!!完結おめでとうございます!!めちゃくちゃ感動しました!!話の終わらせ方が素晴らしい!!新作待ってます! (2018年8月9日 18時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - のりばやしさん» そう言ってくださり嬉しいです!ありがとうございます〜!! (2018年5月24日 18時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 話の展開と語彙力に心を動かされます。更新頑張ってください!!(*^ω^*) (2018年5月23日 19時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - すばるさん» 返信遅くなって申し訳ございません…!!ありがとうございます!!可愛い太宰さん、いいですよね…!(*´▽`*) (2018年2月23日 20時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お湯 | 作成日時:2017年10月9日 18時