勘違い ページ4
「で、私とこの猫が似てるってどう云う事さ」
『えっと…それは、その…』
スッと目線を逸らして猫を見る。
…その、茶色のボサボサの蓬髪とか_______
――…云えない。云ったら駄目なやつだ。
「早く答えなきゃ今日も私の膝の上ね。いーち、にー、」
『分かりました答えます!答えますから!!』
何という脅し方だ。
再び上司の膝の上に座るなど、また目線が刺さるのでもう経験したくないと思ったのに。
上司の膝に座る部下なんていてられるか。
そう思った気持ちを飲み込み、覚悟をして云ってみる。
『そのですね…貴方のその茶色の髪と、この猫さんのふわふわの茶色の毛並みとか…です』
猫さんの毛がふわふわで長いのは、まだ子猫だからだ。
大人になったら今よりもずっと、毛は短くなる。
とうの太宰さんはキョトンとした顔で私を見、お腹を抱えてアハハと笑い出した。
「あっはは、猫と上司を重ねるなんて君は悪い子だねぇ」
『ご、御免なさい…』
「んー、でも私的には君の方が猫に似てると思うけど?」
『え』
…なんと。
云われて考えてみたが、思い当たる物が見つからない。
一体、私の何処が猫に似ているというのか。
まるで私の心を読んだかの様に、太宰さんは人差し指を立てて説明してきた。
「たまーに気まぐれな所。怒ると少し不機嫌になる所。たまーに手が出る所。あと、目の前のご褒美とかに飛びつく所」
『う"。』
否定出来ないのが恨めしかった。
確かに自分の行動を思い返すと、猫っぽい所はある様な、無い様な________
いや、なくていい。
「じゃあこの猫、Aって名前にしようか」
『はあ!?何で私の名前を―――』
太宰さんはまた、ヒョイと猫を抱き上げ、優しい手つきでわしゃわしゃと撫で始めた。
「大人しいね〜Aちゃんは!然もふわふわだ〜!」
『っな…!』
…此奴、確信犯だ。
現に今、目線は猫に向きながらも口元はニヤニヤと私を笑っているのだ。
私の事ではないのに私の名前で呼ぶから、分かっていても勘違いをしてしまう。
二つの意味で恥ずかしくて死にそうだった。
「嗚呼、凄くあったかいよAちゃん。それに、……凄く、可愛い」
『頼むからやめろください!!!』
涙目でお願いした。
太宰さんは最後に小さく笑い、抱いていた猫を下ろして口を開いた。
「それでさ、此の儘だと二人して遅刻なのだけれど?」
『…え?―――…っあああ!?』
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お湯(プロフ) - のりばやしさん» またコメントありがとうございます…!感動してくださったならなによりです!新作も頑張ります(*´`*) (2018年8月9日 19時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - もう一度失礼します!!完結おめでとうございます!!めちゃくちゃ感動しました!!話の終わらせ方が素晴らしい!!新作待ってます! (2018年8月9日 18時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - のりばやしさん» そう言ってくださり嬉しいです!ありがとうございます〜!! (2018年5月24日 18時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 話の展開と語彙力に心を動かされます。更新頑張ってください!!(*^ω^*) (2018年5月23日 19時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - すばるさん» 返信遅くなって申し訳ございません…!!ありがとうございます!!可愛い太宰さん、いいですよね…!(*´▽`*) (2018年2月23日 20時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お湯 | 作成日時:2017年10月9日 18時