彼女の異能力 ページ26
探偵社の医務室_____子供の様な寝顔でAちゃんは眠っていた。
あの後、気を失っている彼女を見て二人は驚いた顔をしたが、取り敢えず無事だと云う事を伝えた途端、心底安心した表情を見せた。
…気を失わせたのは、紛れも無く私なのだけれど。
だが仕方が無い事だったと思う。だって、あの時のままの彼女を見たら、二人はきっと酷く驚くから____だからきっと、あの判断は正しかったのだ。
柔らかな髪梳くように、ゆっくりと彼女の頭を撫でる。
ふと、コンコン、と医務室の扉を叩く音がした。どうぞ、とだけ返し、開いた扉から入ってきたのは敦君だ。
「太宰さん。Aさんは──…」
「無事だって云ったろう?特に怪我はしていない。もう直ぐ目覚めるさ」
「ですけど…その…」
気まずそうに、目線をAちゃんに落とした。
「…犯人を殺したのって、…Aさんなんですよね…?それも、一人だけじゃなくて…」
「…嗚呼。…そうだよ」
問いかけられた質問の答えに、敦君は眉尻を下げる。
その哀しそうな色の瞳に、今度は私を映した。その瞳はゆらゆらと揺れている。
「…。あの、太宰さん」
「何だい?」
「…Aさんの異能力って、一体何なんですか…?その…知りたいんです」
「…そう云えば、まだ君には教えていなかったね」
隠していた訳じゃないが、そもそも彼女が自分の異能力を使いたがっていなかったのだから当然の事かも知れない。
今でも思い出す。彼女の異能力を知ったあの衝撃を。
コホン、と一つ咳払いをして言葉を出した。
「Aちゃんの異能力は───"風"だ」
「風…?」
きょとん、と驚いた顔をする敦君。
そりゃそうだろう。人を殺した異能力の正体が、日頃吹いている風だなんて聞いたら。だが、あの異能力にはそんな穏やかさなんて微塵もない。
誤解をさせない様に説明を続ける。
「その場の空気を寄せ集め、一つの場所へと集中させる。もちろん、それに使われる空気なんてほんの少しさ。問題は、その集中のさせ方なのだよ。Aちゃんの異能力は。
集めた空気を、横に広く、そしてとても薄い形にする。空気で出来てるから見えないのは当たり前だが、比喩的な表現をするのなら、それはもう目に見えない程の厚さだ」
「空気を集めて…、風を作る…」
「そう。否、地球上に吹く風とはまた違う物だね。だって、作っているのは只の空気だけなのだから。気圧だとか全く関係がない。本来の風の作りとは異なる」
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お湯(プロフ) - のりばやしさん» またコメントありがとうございます…!感動してくださったならなによりです!新作も頑張ります(*´`*) (2018年8月9日 19時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - もう一度失礼します!!完結おめでとうございます!!めちゃくちゃ感動しました!!話の終わらせ方が素晴らしい!!新作待ってます! (2018年8月9日 18時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - のりばやしさん» そう言ってくださり嬉しいです!ありがとうございます〜!! (2018年5月24日 18時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 話の展開と語彙力に心を動かされます。更新頑張ってください!!(*^ω^*) (2018年5月23日 19時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - すばるさん» 返信遅くなって申し訳ございません…!!ありがとうございます!!可愛い太宰さん、いいですよね…!(*´▽`*) (2018年2月23日 20時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お湯 | 作成日時:2017年10月9日 18時