最悪の展開 ページ22
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────「Aちゃん!任せた!」
なんて事を云った自分を、今すぐにでも呪ってやりたい。
国木田君から伝えられていた、刃物を持ったフードの男。其奴をAちゃんに追わせ、私が被害者であろう女性の手当をする筈だったのに。
私とした事が、なんて言葉を吐いてももう遅い。
だって、被害者だと思っていた人物は被害者ではなく、加害者だったからだ。
差し出した手の目先、下を向いていて見えなかった表情。それが見えた今、思わず反射的に手を引っ込めた。
泣いているかと思ったのに、ニタリと不気味に笑っていたのだから。
「────久しぶりね、太宰治」
「っお前は…」
冷や汗が背中を蔦って気持ちが悪い。
─────しくじった。
横で纏められた長い髪、人形みたいな目をした黒い双眸。
妖艶な雰囲気を纏った女だった。
真逆、自分が過去に殺した男の妻が、今になって現れるなんて。
殺意を孕んだ瞳に見詰められている。ドクンドクンと、心臓が早鐘を打つ。
その瞳に、ではなく、この先に見える最悪の展開に、だ。
「A…、私の部下は…ッ!」
悪魔の様な微笑みに、嫌な予感が確信に変わっていくのを感じた。
「真逆貴方が私の方に来るなんて思わなかったのだけれど。まあいいわ、これから凄く、楽しくなりそうな予感がするのよ」
「ッやめろ!彼女には手を出すな!」
思わず叫んだ言葉に、女は恍惚的に口元を歪めただけで、それを否定もしなかった。心底、悍ましい女である。
「ああ素敵。あの太宰治が、そんな表情をするなんて!」
「この狂人が…っ!」
敵意を込めて睨み付ける。
狂人と呼ぶにふさわしい。この女は、完全に狂っている。
湧き出てくる怒りという名の感情。今すぐにでも殺してやりたかった。
然しそんな時間はない。何しろ、自分の部下が今危険にさらされているのだ。
「今度は必ず、お前を殺す」
「ふふ…、一体どちらが早いかしらね」
舌打ちをし、Aちゃんが向かった方向へ全力で走った。
溢れ出る憤怒と殺意。憎しみ。だが、後悔はそれを上回った。
私は最悪な選択をしたのだから。
「ふふ。あの女の子なら、きっと私を楽しませてくれるわね」
噛み締めた唇から、不味い鉄の味がした。
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お湯(プロフ) - のりばやしさん» またコメントありがとうございます…!感動してくださったならなによりです!新作も頑張ります(*´`*) (2018年8月9日 19時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - もう一度失礼します!!完結おめでとうございます!!めちゃくちゃ感動しました!!話の終わらせ方が素晴らしい!!新作待ってます! (2018年8月9日 18時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - のりばやしさん» そう言ってくださり嬉しいです!ありがとうございます〜!! (2018年5月24日 18時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 話の展開と語彙力に心を動かされます。更新頑張ってください!!(*^ω^*) (2018年5月23日 19時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - すばるさん» 返信遅くなって申し訳ございません…!!ありがとうございます!!可愛い太宰さん、いいですよね…!(*´▽`*) (2018年2月23日 20時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お湯 | 作成日時:2017年10月9日 18時