段ボール箱には ページ3
『…あ』
時刻は朝。
探偵社に出勤しようと、いつも通りの通勤路。
――――其処には、段ボール箱に入った小さな子猫が。
にゃあ、と鳴いて自分を見ていた。
『こんな所に…捨て猫かあ』
見た所汚れは見つからないので、恐らく捨てられたばかりだろうか。
茶色の毛でふわふわで、凄く可愛い子猫だった。
因みに、首輪は付いていなかった。
『こんな可愛いくて小さい子を捨てるなんて…酷い人だなぁ』
そう呟いて、猫の頭を撫でてみる。
思ったより大人しく、撫でてやると気持ち良さそうに目を細めた。
動物は好きだ。可愛いし、癒される。
然し、この可哀想な猫を一体どうすればいいのか。
放って置く事などできなかった。
『うーん…あ、社長なら…でも、探偵社じゃ飼えないしなあ』
…道端で一人うんうん唸っている様子は、傍から見ればかなり可笑しい人だが、状況が状況なので全く気づかない。
その時、突然と影が私に落ちる。
「Aちゃん?」
余りに突然で驚き、ビクリと肩が跳ねる。
そうか、遂に私は________
『如何しよう…遂に太宰さんの幻覚が見えるぞ…』
思わず声を漏らすと幻覚の太宰治さんはムッとした顔で、「本物だよ」と云った。
如何やら本物の私の上司らしい。
『おはようございます、如何して此処に?凄く、とても凄く珍しいのですが』
そう、今は出社時間前なのだ。
遅刻当たり前の太宰さんが如何してこの時間に此処に________
「それがね、国木田くんが報告書だせって五月蝿いからさ。その報告書、すぐ社長に提出するつもりらしいから」
『ああ、そういう事ですか』
納得した。
社長が絡んできちゃあ、流石に太宰さんも逆らえないのだから。
「で、Aちゃんはこんな所で何してるのかなーと思ったら、猫かあ」
そう云って、猫を両手で抱き上げる。
猫は又、にゃあ、と鳴いた。
『――――あ』
「Aちゃん?」
云えない。
茶色の毛でふわふわで、その猫と太宰さんが並んだらそっくりだと思ったなんて、私には絶対に云えない。
「何か、変な事考えてない?」
『…イエナニモ』
云っては駄目だ。云ったら果たして何をされるか_______
「ねえAちゃん」
『はい何でせう』
「この猫と私、似てると思う?」
『はい、とても凄く似てると思います』
『――…あっ』
―――――目の前で、ニッコリと笑う私の上司がいた。
「Aちゃん」
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お湯(プロフ) - のりばやしさん» またコメントありがとうございます…!感動してくださったならなによりです!新作も頑張ります(*´`*) (2018年8月9日 19時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - もう一度失礼します!!完結おめでとうございます!!めちゃくちゃ感動しました!!話の終わらせ方が素晴らしい!!新作待ってます! (2018年8月9日 18時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - のりばやしさん» そう言ってくださり嬉しいです!ありがとうございます〜!! (2018年5月24日 18時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 話の展開と語彙力に心を動かされます。更新頑張ってください!!(*^ω^*) (2018年5月23日 19時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - すばるさん» 返信遅くなって申し訳ございません…!!ありがとうございます!!可愛い太宰さん、いいですよね…!(*´▽`*) (2018年2月23日 20時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お湯 | 作成日時:2017年10月9日 18時