辿り着いた答え ページ20
____ブツリ、と。
私の腕を縛っていたロープが切れた。
ズバリ、と。"見えない刃"で切り裂かれたみたいに。
やっと自由になった私は立ち上がって女を見据える。
女は一瞬だけ目を見開いたが、すぐに微笑んだ。
異様で、異常で、不快で、不気味で。なんとも気持ちが悪いと思う。
「それが貴方の答えなのね。ふふ、良いと思うわ」
『やっと分かりました。お前のおかげですよ』
やっと辿り着いた答え。
あの人の部下としてずっと、隣にいた私だから掴めたモノ。
―――こんな奴に、私に踏み入る権利なんてない。
激情を抱き、感情的になりそうな己を鎮めようと自分の手に思い切り爪を立てた。
きっと、旦那を殺された時の女と、今の私は同じ感情だろう。
穏やかだとか、優しさだとか、そんな飾りみたいな言葉とは余りにもかけ離れすぎている。
人間に、ここまでの感情があるなんて。
「これから如何するの?」
『お前を殺します』
「まあ、残念」
少し昔の私が聞いたら、本当に自分なのかと思わせるくらいの台詞だ。そんな現状に思わず、言葉を漏らす前に自嘲が出た。
案外これが私なのかも知れない。
「太宰治が積み上げてきた死体がどれくらいなのか、それを知ったのに貴方はついて行こうとするの?」
『そうだ』
「踏み付けた「死」を、貴方は無視をするというの?」
『そうかもしれないな。それでも私は、あの人を信じている』
ああ、そうだ。きっと私は。
「どうでもいいのね」
「信じる理由"しか"、貴方は持っていない」
「過去なんて知らない。今の太宰治がいれば、それだけで充分に値するって。そういう事でしょう?」
――――バリン、と。大きな音を立てて窓硝子が割れた。
キラキラと、破片が陽の光に反射したのを見た。
心臓を掴まれた気分だった。
女の頬を掠めたらしく、そこからタラリと垂れる赤。
こんな現状でもまだ、「ああ、死んじゃうかと思った」、なんて云って唇は孤を描く。
____憎い。只々憎かった。
感情が、どす黒くてグジュグジュに腐り果てた。
女はうっとりと微笑み―――、
「それが貴方の異能なのね」
『五月蝿い』
「超高速で飛ばす不可視の風の刃。余りに殺人的な異能力ね」
『黙れ』
「正義感の強い貴方がこんな異能を持つなんて、とても皮肉な事だわ!」
『黙れと、云っている!!』
破壊力を伴った風が放たれ、壁が深く抉られた。
我ながら、現実味のない光景だとは思う。最低な気分だ。
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お湯(プロフ) - のりばやしさん» またコメントありがとうございます…!感動してくださったならなによりです!新作も頑張ります(*´`*) (2018年8月9日 19時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - もう一度失礼します!!完結おめでとうございます!!めちゃくちゃ感動しました!!話の終わらせ方が素晴らしい!!新作待ってます! (2018年8月9日 18時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - のりばやしさん» そう言ってくださり嬉しいです!ありがとうございます〜!! (2018年5月24日 18時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 話の展開と語彙力に心を動かされます。更新頑張ってください!!(*^ω^*) (2018年5月23日 19時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - すばるさん» 返信遅くなって申し訳ございません…!!ありがとうございます!!可愛い太宰さん、いいですよね…!(*´▽`*) (2018年2月23日 20時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お湯 | 作成日時:2017年10月9日 18時