呪いの王となる前の。【宿儺】

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side貴方


昨日から、私は宿儺様とまともに顔を合わせていない。

なぜなら、私が徹底的に宿儺様に会わないようにしているからだ。


お食事や着替えを運ぶ時は部屋の前に置き、去る時はすぐさま時操術で逃げる

日中も家事をしながら、常に周囲に警戒して、宿儺様が近くに来たのを感じたらまた術式を使って回避

やむを得ない場合は、時停止を使ったりもした



何故私がこんなにも宿儺様を避けているのかと言うと…

もちろん昨日の今日で、恥ずかしいから。というのは理由の一つだった

だけど、それだけではないのだ



宿儺様と私は、あくまで主と従者

今回は、主が頼っても良いと許可を出したのだから、宿儺様を頼るのは良いのだろう

けれど、この主従関係の間で許されることには限りがある



ある、のに……


このまま宿儺様といれば、きっと私は、
『それ以上』を求めてしまう


宿儺様に私と同じ気持ちを望むことは、主従関係の間で許されることには含まれない


だから、少しの間だけでも宿儺様と距離をとり、頭と心の整理をしたいのだ


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

気付かれないように音を立てずに、夕飯を持って宿儺様の部屋の前まで来た

貴(日中は屋敷内を動いていたみたいだけど、途中からはずっと部屋に篭っていらっしゃった。現に今も、部屋の中に宿儺様の気配を感じる。きっと本などに夢中になっておられるのだろう。)


私は、そっと床に夕飯を置き、術式を発動する準備を整えてから宿儺様に声を掛けた

貴｢宿儺様、夕飯をお持ち致しました｣

ｼｰﾝ

貴(？？気付いてない？)

夕飯を持って来た事に気付いて貰えないのは困る。お味噌汁だって冷めてしまうかもしれない。

貴(どうしよう、もう一度声を掛けるべき？？でも、捕まる危険が増えるし、あまり長居はしたくない…

いや！いざとなったら時を停めればいいんだ！私が従者としての仕事を疎かにしてしまっては、それこそ何も残らないではないか！)


貴｢あの！宿儺様！夕飯を…｣

ﾊﾞﾝ!

貴｢！！｣

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